カンヌ映画祭についてとか。

ちょっと反応するのが遅れたが、5月18日付朝日新聞<ニュースがわかる>欄で「世界の映画祭 往年の輝き戻る日本勢」なんて記事が。カンヌ映画祭イノセンス』『誰も知らない』等が出品の報を受け、「現在の日本映画界の活躍を見ていると、50年代の輝きが戻って来たようにも思える」なんて書いてある。
記者氏の年齢は知らぬが、邦画の50年代黄金期を知っていようとはどうにも思われぬ。たけしだろうと誰であろうと、あの当時の映画の輝きなぞ、あろうハズもあるまい。いかにも書き飛ばしな記事ゆえ、怒るほどではないが、単純に認識不足も甚だしい。現状をかんがみず、無責任に持ち上げるだけってな、詐欺に近いだろってぇの。
オレは基本的には現在の邦画界の支持者でもあるつもりだが、正直言って、往年のカツシンや若富さんの時代劇に対するほどの「思い入れ」はない。真剣なる興味をもって語る対象であり、実際、キッチリ語れる自負も確信もあるけど、実のところ、心理的距離感」はいつも感じていて。自分のなかでは洋画以上に実質「外国映画」なのが現在の邦画なんである。仲間内には業界の人間も多いが、それでもますます気持ち的に遠い存在になる一方だ。
いや、塩田明彦でも行定勲でも誰でもいいが、応援したくなる監督くらいはいるんだよ。でもさ、「親愛」の情はあっても、PTAはじめアメリカ映画の一部同世代系監督には感じられる「共感」まではできない、という面があったりするんだよな。同国人より外国人のほうにシンパシーを感じるってな、基本的にはおかしな話。自分でもどうにも不可解。
オリンピック等スポーツではごくフツーに自国びいき。ただ、映画や小説や音楽となると、やたら採点が辛くなる。つくづくおかしな話だよ、時代劇マニアという時点で思いっきり昔風日本人なハズなのに。まぁ、単純にボンクラゆえの社会からの疎外感とか、つまらねぇ理由だったりするのかもしれないが、ホント、物心ついて以来の悩みだったりする。


ちなみに、是枝裕和監督の『誰も知らない』は、先月、披露試写を見せて頂く機会があった。近年では最も意欲的な作品で個人的には非常に感銘を受けたが、是枝監督作品って今までどうにも賛否両論というか、コアな娯楽映画ファン層にはかなり積極的に拒否反応があって、語り方がなかなか難しいんだよね。カンヌでの受賞結果や信頼できる筋の評価を待って、またいずれ。


そういや、カンヌといえば、またまたウォン・カーウァイが遅延行為をカマしてくれたそうで。『2046』って3年前にできるハズだったんじゃ? 回せるだけ撮りまくって、ラッシュ見てからそれをテキトー(爆)につないで、自分の好きなようにストーリーも何もかもでっちあげるてな、まるで8ミリ自主映画顔負けのやり口。現役じゃ当代最高の映画作家のひとりとオレなんざ思ってるが、よくよくいい御身分だよな、ホント。こんな横紙破りが許されることこそ、真の才能と言えよう。周囲に犠牲者続出だろうけどな。


そんなこんなで、今回の見ずテン予想。クエンティン・タランティーノが審査委員長というコトを加味したくらいでトーゼン当てずっぽ。押井守イノセンス』は何かひとつは受賞すると思うよ、たぶん…なんて具合に希望的観測入れまくりだが、当たったら御喝采! そンときゃ何かくれや(くれるわけねぇか)
パルム・ドール:『2046』ウォン・カーウァイ(中国)
グランプリ:押井守イノセンス』(日本)
主演男優賞:ガエル・ガルシア・ベルナルモーターサイクル・ダイアリーズ
トム・ハンクスレディ・キラーズ』(コーエン兄弟アメリカ)
主演女優賞 :マギー・チャン『CLEAN』(オリヴィエ・アサイヤス、フランス)
監 督 賞:オリヴィエ・アサイヤス『CLEAN』
脚 本 賞:押井守イノセンス』(日本)
審査員賞:マイケル・ムーア華氏911』(アメリカ)
芸術貢献賞:『イノセンス
国際批評家賞:『誰も知らない』是枝裕和(日本)
カメラ・ドール:アピチャッポン・ウィーラセタクン『TROPICAL MALADY』(タイ)