『インソムニア』

で、昨年公開された『インソムニア』をようやくチェック。エーリク・ショルビャルグによるオリジナル版『不眠症インソムニア−』を先にチェックできたのは幸いであった。欧州産サスペンスの米国版リメイクは得てしてオリジナルより薄味になるものだが、コレは上出来の部類。舞台はノルウェーからアラスカに移されたが、白夜という背景設定は変わらず。ストーリーも画作りもオリジナルをほとんどトレース。アル・パチーノと同僚(ハル・ハートリーの常連俳優マーティン・ドノヴァン)が警察の内務調査を受けているという、いかにもアメリカの刑事物らしいエピソードが付け加えられたくらいだが、コレが意外や後々まできいてくる。
リメイクといってもお話だけ頂くだけじゃなく、ルックから映像構成までオリジナルに敬意を払ったのが吉と出たらしい。監督のノーランが英国人で、オリジナルにあった北欧ならではのひんやりと湿った空気感みたいなモノをうまく踏襲できたのも大きいかも。パチーノは近年得意技な枯れかけ初老親爺のボヤキ節で淡々と見せる。オリジナルでのステラン・スカルスゲールドの虚無的な、冷ややかなるたたずまいとはだいぶ違うので物足りないとも言えるが、パチーノならではの味わいは出ている。殺人犯役のロビン・ウィリアムスの何やらナメクジめいた存在感も見もの。彼を尊敬する若き女性刑事(ヒラリー・スワンク)の活かし方にやや食い足りなさは覚えるが、オリジナルでは同じ役どころの女優は印象すら薄いから、「改良」は成功とは言えるだろう。