『新・座頭市 I』第28話「上州わらべ唄」

原作:子母沢寛
脚本:東條正年
監督:太田昭和
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
おひさ:高橋洋子
金太:鹿股裕司
お千代:上谷恵美
お菊:大重予資枝
三太:小南文孝
玉村の弥造:井上昭文
政:下元年世
丑松:蟹江敬三
おかね:三笠敬子
儀兵衛:中村錦司
ほか




上州のある村で、打ち続く凶作に減税を直訴して、庄屋儀兵衛(中村錦司)がはりつけになった。あとには、おひさ(高橋洋子)をはじめ十二人の子供が残った。子供といっても、おひさ以外は血を分けた実の子供ではない。金太(鹿股裕司)、お千代(上谷恵美)、お菊(大重予資枝)など、孤児や、親があっても虐待されているかわいそうな子供たちを、義民の儀兵衛は拾って面倒を見ていたのである。財産はこれまでの慈善事業に使い果たしていた。亡き父の意志を継ぎ、おひさは渡し舟の船頭をしながら、若い娘の身空で子供たちの世話を続けた。おひさのけなげな心がけが評判になり、渡し舟は日増しに繁盛した。
 やくざ玉村の弥造(井上昭文)が渡し舟に目をつけた。権利を渡せと無理難題。座頭市勝新太郎)は、玉村一家をこてんぱんにやっつけた。おひさと市の共同生活が始まった。子供たちも市によくなついた。ひとつのものをみんなで分け合って食べ、不自由ながらも、市には久しぶりに訪れた平穏の日々であった。ただ、年かさの金太だけは、妙に市に反抗的だった。金太は、生活苦から未亡人の母おかね(三笠敬子)が売春する不幸な現場を見てしまい、子供ながらも虚無的になっていた。金太の理由なき反抗が少年時代の自分自身を見るような気がして、市は心が痛んだ。
 玉村一家は、あの手この手で金太を一家に引き入れようとした。そればかりではない。一家の嫌がらせは日に日に募った。いたいけな子供たちに、斬ったはったの修羅場を見せたくはなかった。市は仕込杖を抜きたくなる衝動をじっとおさえた。だが、市の忍耐も極限状態に達するときがきた。好色な弥造が、おひさの美貌に目をつけ、お菊を人質に取ったのである。人非人の弥造は、年端もゆかないお菊をも暴行した…。