『新・座頭市 I』第23話「幽霊が市を招いた」

原作:子母沢寛
脚本:中村努
監督:黒木和雄
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
下津の伊三蔵:原田芳雄
千両のお富・おしげ(二役):江波杏子
忠七:信欣三
二枚目:柴田昭彦
三度笠の男:遠山欽
旅僧:広田和彦
渡世人:下元年世
博徒:田中弘史
ほか

女嫌いでとおっている一匹狼のやくざ下津の伊三蔵(原田芳雄)に、妖艶な女道中師千両のお富(江波杏子)が凌辱された。暴力で思いをとげた伊三蔵は、当たり前なら殺してもあきたらないほど憎い相手であるはずなのに、男嫌いのお富に生まれて初めて女の感情が芽生えた。惚れたが因果。伊三蔵の荒々しい息づかいがいつまでたっても忘れられず、薄情にされればされるほど、いよいよ情がつのり、追われても追われてもお富は伊三蔵につきまとう。
 喧嘩早く乱暴者の伊三蔵は、道中どこへ行っても鼻つまみだった。座頭市勝新太郎)は、変につっかかってくるぶっきらぼうな、愛嬌などひとっかけらもない伊三蔵にかえって親近感をおぼえる。無愛想も愛嬌のうちだ。伊三蔵にはどこか憎めないところがあった。お富が命がけで惚れるのも無理はない。
 伊三蔵が一度だけお富の色香に迷ったのにはわけがあった。お富は死んだ初恋の女おしげ(江波杏子・二役)に生き写しだった。彫物師忠七(信欣三)の娘おしげと伊三蔵は固く将来を誓い合った仲であったが、かねてよりしつこく横恋慕のやくざ八丁徳に暴力で純潔を汚され、おしげは自殺して果てた。伊三蔵は八丁徳を斬ると、せめてもの思い出にと忠七に頼んで背中一面におしげの美しい似顔絵の刺青を彫ってもらい、旅に出たのだった。刺青は未完成だった。
 刺青の最後の仕上げに久しぶりに故郷へ帰った伊三蔵は、八丁徳一家になぶり殺しにされてしまう。そして…。