竹中労「決定版 ルポライター事始」(ちくま文庫)

モトシンカカランヌー、……という言葉が沖縄にある。
資本(もとで)のいらない商売、娼婦・やくざ・泥棒のことだ。顔をしかめるむきもあるだろうが、売文という職業もその同類だと、私は思っている。
(中略)
ルンペン・モトシンカカランヌー、“三文文士”と自己を規定し、貧乏神を生涯の伴侶とし、火宅を終の栖とするところに、この職業のよろこびはあり誇りもまたあるのだ。

竹中師の名著「決定版 ルポライター事始」冒頭に書かれた若きルポライターへ向けての檄文より。

いささか激越な序に、へきえきをしたむきもあるだろうがページを開きたまえ。もし途中でこの書物をほうり出したら、君は私の友人ではない。

売文関連稼業から足を洗っちまった身の上ながら、いまだページをめくるたび、背中をどやされるような迫力に満ちみちた「ペンの闘士」の力強き文体に胸打たれる。師の言に背いてはいようが、稼業はどうあろうと、心中からなにがしかの「志」さえ捨てなければ、人間、堕ちずして生きていけるんじゃないだろうか。。。