「SMiLE」:ブライアンとオレ。

いやぁ、やっぱり何度でも聴けるよ>「SMiLE」。やればできるんじゃん! ブライアン! エリック・クラプトンだのとヌルい競演してる場合じゃないって! 
千変万化、摩訶不思議、天上極楽……いかな言葉を使っても語り切れぬ、唯一無比なる興趣の尽きぬ音世界。もちろん、「ペット・サウンズ」発表翌年、ブライアンもパークスも現役バリバリの頃に完成できていたらもっと素晴らしいモノができあがったかもしれないけど、それは「たられば」の話。
id:plagioさんもお書きになっていたけど、リアルタイムでコレが聴けるというコトだけでもオレは満足。好き嫌いや評価はともかく、コレだけ語り倒せる作品にまた出くわせたというだけでもめっけもんじゃないかって。こんな音使いでポップソングを構築できるヒトなんていませんよ! こりゃあ、ぜったい来日公演祈願するっきゃないぞ! たとえ歌声が震えようが出てなかろうがイイ、この音世界、ナマで多くの観客と共有して聴いてみたい。
思い出すなぁ、「ペット・サウンズ」を毎朝必ず聴いて出勤していた社会人1年目の日々を(爆)当時は上の階のヤツがチョー神経質野郎で、かけるたびにドンドン床を叩かれたりしたが、構わずかなりの声出して唄ったりしてた。そりゃアンタ、朝から「駄目な僕」ですよ、「素敵じゃないか」、ボンクラなれど勤務態度はいっぱしヤクザでしたわ。半年くらいは何となく聴き続けていたような。聴くたびに少しずつ、ブライアンの繊細な魂に近付いて、触れられるような気がしてた。会社じゃ当時の上司とチョー険悪になるいっぽうだったが、金曜日夜の後輩たちとの飲み会や休日ごとの8ミリ撮影の参加など、底抜けに楽しい日々だったようにも思う。今でも「ペット・サウンズ」を聴き返すと、やさぐれつつも楽しかった、そんな当時の思い出や気分が、なんとなしに甦る。
それにしても、「SMiLE」の楽曲に満ちあふれる生命力、こりゃ一体なんだろう? 「ペット・サウンズ」にはあったそこはかとなく哀愁というかペーソスが、今回の「SMiLE」はない。脳天気とまではいかないまでも、心身が更新されるようなみずみずしさがみなぎっている。オリジナル録音は(音質の悪さもあって)ややもすると寂寥感漂うさみしげな感触があったように記憶するのだが。年月を経て、長いトンネルをくぐり抜けて、ようやく復活を果たした男の「再生」の歓びが音全体を覆っているようにも思える。こんな音は、オリジナル録音の初CD化では無理。ニュー・レコーディングでこそ味わえる、新鮮味だ。
……参ったな。マジ、名盤じゃないですか、コレ? 毎日聴いてしまいそうだ。