ギリシャVSチェコ

まるであたかも、ひとりひとりが槍ぶすまをつくって、敵前に立ちふさがり、アリの子一匹自陣には通すまいとせんがごとき、ギリシャの恐るべきマンマーク組織ディフェンス。かくのごとき堅陣を突破するには、まさに木立の間の小道もするりと通す、チェコのしなやかなるウルチカ・パスこそ対抗し得り! と見ていた。予想は裏切られず、さしものギリシャも決定的な場面を何度もつくられて冷や汗しきり。ゲームのカギこそ握れど、主導権は終始、チェコにあったといっていい。
ところが、今回は運というか、サッカーの女神はあまりに皮肉な展開を用意。チェコの闘将ネドヴェドが負傷退場したのだ。これで攻守の「核」を失ったチェコは、代わりにシュミツェルを投入。こちらも百戦錬磨の戦士シュミツェルのこと、サイドアタック等、要所でゲームメイク、ポボルスキー、コレル、そして今日は調子もよかったロシツキと共に波状攻撃を仕掛ける。しかし、ギリシャは体当たりの守備でひたすらしのぎにしのぐ。かくて、気がつけばまたも延長戦へ。
延長に入ってからはギリシャは一転、攻め疲れでじりじり下がり気味なチェコ陣内に攻め上がる。さしもの名将ブリュックネルも、バランスを考えたか、いつもの機を見るに敏な采配を見せられず、交代の切り札、ハインズがなかなか投入できず。前半15分もあっと言う間に過ぎ、ようやくハインズ投入の準備が整った途端、ギリシャが延長開始から送り込んだ不気味なる刺客、ツァルタスコーナーキックを蹴る。かろやかに放たれたクロスは弧を描き、最前線にいたデフェンスの要、デラスのヘッドにぴったり合い、ついにゴール! あまりの展開に、チェコイレブンは唖然呆然、動けずじまい。間をおかず、本試合がユーロ最後の試合となる名審判コッリーナが終幕の笛。
チェコ、まさかまさかの敗退は残念無念。しかれども、よくぞ戦った。ギリシャの強さはフロックでもなんでもないゆえ、この敗北は悔しくとも、栄誉たることは変わりなし。最後まで世界最高レベルのサッカーをしたと胸を張って欲しいと思う。ネドヴェドら主力は今大会かぎりで代表引退かもしれぬが、2年後にはドイツが待っている。チェコ旋風はまだまだ吹くハズ。
それにしても予想外、今大会はギリシャに始まり、ギリシャに終わることと相成った。ポルトガルが臥薪嘗胆の末、初戦敗北のリベンジを果たすか、今度も自信をもってギリシャが受け流すか? 決勝が楽しみだ!