國定忠治

昨日に続き、BS−2で新国劇総出演映画を見る。
「赤城の山も今宵かぎり。かわいい子分のてめえたちとも、別れわかれになる門出だ……」
てな、あのあまりに有名な名文句がないのにビックリ。徹底したリアリズムで、しょせんは「こやしくせぇ」百姓あがり、実像は侠客なんて柄じゃなかったらしい忠治の成り上がり人生を、辰巳柳太郎がアク強く力演。島田正吾は忠治の片腕として知られたという日光の円蔵役で助演。白寿を迎えた今も舞台に立つ生ける時代劇の語り部たる御大、どうにもいかがわしく、ふてぶてしい役柄もすんなりこなしてて感心。なお、脚本は菊島隆三黒澤明の『用心棒』もこの人。
絢爛豪華、綺羅に伊達、まさしく時代がかった大見得きるだけが時代劇じゃない。登場人物がちょんまげつけていようと、現代にも通じるドラマとして撮りあげるという流れは戦前映画(伊藤大輔らの<傾向映画>とかね)からあったわけだが、その典型みたいな作品だったかなと。見終わって痛快な気分になれるシャシンじゃ全然ないが、こういうのもグッときます。
しかしま、辰巳柳太郎ってのもいい役者さんだよなぁ。この人、オレは高校か大学の頃だったか、TVでやってた川島雄三監督の『わが町』でたしか初めて見たんだが、ちょうど横にいたオカンが「辰巳柳太郎が車引きみたいな役やってるんや! 珍しいわぁ」なんて驚いてたのを覚えてる。辰巳柳太郎といえば時代劇の大立者、という印象が世間では圧倒的に強かったわけですな。
オレの世代くらいまではなんとはなしに親から往年のスターの話とかを伝え聞いて、それを遺産として受け継いでいる感じがあるんだけど、最近の若人はどうなんですかね? ま、映画業界に来る青年でも「カツシンってナンですか??」などと平気で聞いたりするらしいから、「時代は変わった…」とあきらめるしかないんだけどさ(嘆)。