今年のベストテンなぞ。

そろそろベストテンの季節。こういうリスト作成、実は三度の飯より好きかもしれんオレ(笑)
毎年新作を見る本数は減るいっぽうだが、今年は見たなりに収穫はあった感じ。
<洋画>
1.『パンチドランク・ラブポール・トーマス・アンダーソン
1.『ボウリング・フォー・コロンバインマイケル・ムーア
3.『ヘヴン』トム・ティクヴァ
4.『アララトの聖母アトム・エゴヤン
5.『トーク・トゥ・ハーペドロ・アルモドバル
6.『ポロック ふたりだけのアトリエ』エド・ハリス
7.『過去のない男アキ・カウリスマキ
8.『歌追い人』マギー・グリーンウォルド
9.『二重スパイ』キム・ヒョンジョン
10.『略奪者』ルイ=パスカル・クヴレア

次点:『ロスト・イン・ラマンチャキース・フルトン&ルイス・ぺぺ
シティ・オブ・ゴッドフェルナンド・メイレレス&カチア・ルンチ
『リベンジャーズ・トラジディ』アレックス・コックス
『戦場のフォトグラファー ジェームズ・ナクトウェイの世界』クリスチャン・フレイ
『アバウト★シュミット』アレクサンダー・ペイン
『カンパニー・マン』ヴィンチェンゾ・ナタリ   
『北京バイオリン』チェン・カイコー   
『KEN PARK』ラリー・クラークエド・ラックマン
『私は<うつ依存症>の女』エーリヒ・ショルビャルグ
ギャングスターNo.1』ポール・マクギガン
『デッドベイビーズ』ウィリアム・マーシュ
キリクと魔女ミシェル・オスロ
タイタニックの秘密』ジェームズ・キャメロン
コンフェッションジョージ・クルーニー
etc.

パンチドランク・ラブ』『ボウリング・フォー・コロンバインは2作共、おそらく今後もマイベスト級の重要作になりそうな気配。
物語の面白さならトーク・トゥ・ハーが出色。小人登場の幻想シーンなんざ、江戸川乱歩かと思ったぜ。オスカー脚本賞受賞は至極当然(外国映画で受賞するのは意外だったけど)。
『ヘヴン』『アララトの聖母では語り口の妙を堪能。どちらも映画への真摯な取り組み方に感銘しきり。
70年代男気映画の雰囲気もあった『二重スパイ』の簡素なタッチにもちょいしびれた。男気重視のオレとしては、名優エド・ハリスの初監督作ポロックの武骨さも忘れがたい。
『歌追い人』は映画の出来自体は普通だが、アパラチアン・ミュージックというネタがあまりに素晴らしいので、特にチョイス。偏愛するフェアポート・コンヴェンションの超名曲「マティ・グローヴズ」の原曲バージョンまで登場して感涙。
カウリスマキとコックスは、別に新しいコトも特筆すべきコトもナニもしていないんだが、単純に彼らの作風のファンという理由でピックアップ(笑)『ロスト・イン・ラマンチャも同じくテリー・ギリアムのファンだから。

『略奪者』は個人的にはちょっとだけ評価してやってほしい一作。この監督の新作『ミシェル・ヴァイヨン』はリュック・ベッソン脚本・製作ってコトでもわかるように、作風はもろ“ポスト・ベッソン派”、CM/PVノリのチャカチャカした映像。なので、血湧き肉踊る男気アクションというにはやや薄手なつくりは否めないが、実は古典的名作『恐怖の報酬』のリメイク的作品でもあって、意外やオリジナルの見せ場をしっかり踏襲、事件が起こる空間設定にこだわっていたりと結構よくできているんです。あっけなくも唖然とするラストも、幕の引かせ方にアメリカ映画にはまずない、ヨーロッパ映画ならではの「余韻」のもたせ方が見えて、侮れないし。劇場公開版は不自然な英語版で残念だったが、ビデオ/DVDはどうやらオリジナルのフランス語版*1らしいので、興味ある向きはよろしければ御一見を。思わぬ拾い物になるかもよ!?
なお、10本に共通するキーワードは「孤(ひとり)」といったところ。「孤独感」「孤軍奮闘」「孤高」とかの「孤」。ひとりであれこれ思い悩んだり、他人の介入を許さずひとり頑張ってみたりするキャラクターが目につく。オレの現状のまんまじゃん! 勝手に同類と思い込んだキャラにシンパシーがいってたらしいや。わかりやすいね。
いつにも増して、個人的な思い入れ最優先で選んでいるが、オレはベストテンなんざ本来そうあるべきじゃないか、と思っている。評論家じゃないんだからさ、気に入った作品を選べばいいのだ。てめえのセンスだの見識だの教養だのを誇ろうとするのは不遜きわまりないし、さもしい根性だろうと。
ところで、ホントに外せないと思える作品は5.まで。6.以下は次点と入れ替え可能。いちおう自分的には題材、製作国、スタッフ/出演者等、同じ構成要素が重なったりしないよう、バランスくらいは考えて選んだつもり。それくらいのサービス精神つうか選別センスはあっていい。



<特別賞>
★主演女優賞:ケイト・ブランシェット『ヘヴン』
★主演男優賞:アダム・サンドラーパンチドランク・ラブ
助演女優賞ノーツァ・クーアドラ『略奪者』
助演男優賞ポール・ベタニーギャングスターNo.1』『デッドベイビーズ』
★ベスト・キャメラマンエド・ラックマンエデンより彼方に』『KEN PARK』
★飛び道具で賞:ビル・ナイアンダーワールド』『ラブ・アクチュアリー
★しかめつらで賞:クリストファー・プラマーアララトの聖母
★イケてるハリボテで賞:シャコ(<えびちゃいまんねん、シャコでんねん)『えびボクサー』/代理人アルバ叶井
★いつの間にB級映画の傍役専門になったんで賞:アントニオ・バンデラス『バリスティック』『ファム・ファタル
★オレ的にもラジー賞、または一体、誰が誰の“宿命の女”だったんで賞ブライアン・デ・パルマファム・ファタル


<邦画>
1.『冬の日』川本喜八郎ほか
2.『ホテル・ハイビスカス』+『白百合クラブ 東京へ行く』中江裕司
3.『呪怨2清水崇
4.『座頭市北野武
5.『蛇イチゴ西川美和
6.『カクト』伊勢谷友介
7.『黄泉がえり塩田明彦
8.『ドッペルゲンガー黒沢清
9.『ぼくんち阪本順治
10.『蒸発旅日記』山田勇男

正直、邦画新作は極力見ずに済ませている感じ。昔から洋画よりなじみ薄いし、見ていていろんな意味で「痛い」作品が多すぎるし、仲間内に業界内部の人間が多いし……等々、見る前から有象無象のプレッシャーを感じて疲れるんだよな。
そんなこんなで、厳密には「邦画」と言えないかもしれないのでやや反則だが、1位は日本のお家芸、俳句&アニメの合体連作『冬の日』にした。
たけし座頭市は予想以上の出来映えの殺陣だけは楽しんだし、娯楽作としてサービス感覚なら今年度邦画中でもベストワン級だろうが、個人的にはたけし監督作では一番ダメな部類の作品かも*2。ダメでもベスト5クラスというのは決して喜ばしい事態じゃない。映画全体の「質」が世界中で低下しているんじゃないか? と不安になるのみ。
是枝裕和プロデュースの『蛇イチゴ』『カクト』はどっちも興味深く見た。『蛇イチゴ』はちとおぼつかない手付きの演出*3はさておき、監督・西川美和の若干27歳女子が書いたとは思えん、往年のTBSやNHKの名作ホームドラマばりのヘンに老成した脚本に感心した。オチのつけ方とか構成面は物足りないが、シチュエーションやキャラの描き込みに光るモノを感じました。もっとも、こういうこまごましたセンスは映画向きじゃなく、いい意味でTV向きだと思う。夢はでっかく、“平成の向田邦子”を目指せ! とあえて無責任発言。
できちゃった婚ヒロスエの元カレ、伊勢谷友介の『カクト』は、映像*4といい語り口といい、正真正銘どこを切っても新世代兄ちゃんの映画。イキがっちゃいるけど根は真面目なイマドキ青年のどうにもさみしげな「世界認識」((C)大和屋竺)にやられたというか……まぁ、オレもまだ若僧なんで、気持ち的に共感できる部分もあったりして。
2作共未熟な面が目立つし、世間的評価は低いようだが、磨けば光るモノはありそうだから、今後に期待。


なお、栄えあるワーストワンは青山真治『月の砂漠』。駄作というより超愚作、いや、「恥作」とでもいうか、とにかく唾棄すべき一作。オレはてめえの世代ではレアな立教大パロディアス・ユニティの遅れてきたファンで、その周辺の映画人もフォローしてきたつもりだが、かの仁だけは認めがたい*5。いいかげんに日本で“ポスト・ヌーヴェルバーグ”(「ポスト」って言っても随分時代が離れてるけどな)なんざ目指すのはやめなせぇ、見ていて恥ずかしいだけだ。終わってるカイエ系*6つうかさ。邦画界は人材不足だけに、この仁は今後も数少ないオピニオンリーダーとしてやたら文化人扱いされ、機会あるたび発言だの対談だのするだろうが、メディア側も読者もマトモに対処なぞしてると、まちがいなくバカを見るであろう。予言ではない。現時点でそうなってるでしょ?


<鑑賞>
1.『狼は天使の匂いルネ・クレマンセバスチャン・ジャプリゾ(借用ビデオ)
2.『さらば友よ』ジャン・エルマンセバスチャン・ジャプリゾ(TV放映、テレビ東京
3.『ニューポート・サウス』カイル・クーパー(TV放映、WOWOW)
4.『いま裸にしたい男たち 宮迫博之編/宮迫が笑われなくなった日』演出:西川美和(TV放映、BS-2)
5.『僕たちは平川地一丁目』(TV放映、日本テレビ

劇場公開の最新作以外、映画祭やDVD・TV等でチェックした作品。例年、それなりに楽しいブツに出会っていたが、今年は不作。サッカーとニュースしか見なくなったせいかも(苦笑)テレビ東京午後のロードショー』はひたすら録画するだけで、見てないモノが多すぎるし……。
このなかでは革命的タイトルデザイナー、カイル・クーパーの初監督作が出色。画面・音響・音楽等、細部に至るまで徹底的につくりこまれた独特のシャッフル感覚あふれた映像構成、クールすぎるルック。ネタは最近流行の学園ドラマで、しかもパロディアス・ユニティばりの学園闘争モノ(笑)。物語こそ違うが、雰囲気的には「21世紀の『ifもしも…』」といった印象も。
役者の演出やストーリーテリング等、ややワケワカ、つうか不完全な部分もあるんだけど、そのへんもまたツッコミ甲斐があってよろしい。アメリカでも小規模公開のみでまるきり評判を聞かないけど、実は本年日本未公開作「玉」中のギョク。これぞまさしく新時代の映画……なんて表現するとちと爺くさいか。良くも悪くも久々に本物のヴィジュアリストの映画を見せてもらった気がする。たきやん尊師は御覧になっているのか、どうか知らないが、見ていて欲しいなぁ。典型的な滝本誠系映画”(?)だもん、絶対!


それにしても、ことごとくミニシアター系作品だけのセレクトになったコトを個人的に大反省(『呪怨2』『座頭市』『黄泉がえり』は拡大公開作だが、3作共もともと単館系作品)。もっとも、期待した娯楽大作『ターミネーター3』『HERO』はいまいちだったし、周囲でも話題沸騰の『キル・ビル』『ラスト・サムライ』も未見だし、劇場に行く気力自体がやっぱどうにも薄れ気味。
ただ、ファインディング・ニモだけは、見たらベストテン入りかも。ピクサー万歳!

*1:フランス語版ならエンドクレジット曲はエディット・ピアフの名曲「水に流して」のカヴァーがかかるハズ。実はストーリーを皮肉に反映している、この選曲センスもなかなかイケてるんじゃないかと。

*2:世紀の底抜け珍作『みんな〜やってるか!』のほうが好感が持てるってコトだ。前作『Doll』を見逃しているのでナンとも言えんけど。

*3:役者とのコミュニケーションはしっかり出来ているが、とにかく「画」がまるきりつくれておらずダメダメ。キャメラ三池崇史組の名手・山本英夫なんだから、もっと活躍してもらわないと!

*4:流行りのデジタルビデオ撮りってコトもあり、若干チャカチャカしたCM/PVノリの映像が続くのだが、使い方をそれなりにわきまえている感じがあって好感度アップ。なお、編集の大永昌弘はカツシン組の偉才・谷口登司夫のお弟子にあたる、今後も期待がもてる編集マン。何の縁もゆかりもないが、本作では貢献度大だったのでは? と勝手に推測。

*5:『EUREKA ユリイカ』だけは評価しているつもり。鬼才キャメラマン田村正毅にいかにも彼らしい仕事をさせ、当代随一の名優・役所広司の巧演を引き出し、天才少女・宮崎あおいを世に知らしめた点は、監督の才能として評価されてしかるべきだろうから。本作もワーストにするくらいの価値はあるというコトだ。これ以上フォローする気はないが(笑)

*6:アルノー・デプレシャンフランソワ・オゾン等々誰でもいいが、ウィットもナニもないつまらんフランス映画を撮り続け、リュック・ベッソン一派の暴走を許したつまらんインテリ監督ども、いいかげんにしろ! 映画のなかで映画についてつまらん問答してるだけ、退屈でしかないんだよ! オレ含む仲間内で評価高いのはオリヴィエ・アサイヤスだけだ。理由は冗談半分だが「(作品中に)ロックの魂が入ってるから」(爆)