子連れ狼はやっぱトミー若山なんだってば。

「♪しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃん」……てなわけで、ヨロキンこと萬屋錦之介主演の子連れ狼を久々に見る。若山富三郎の映画版全6作のマニアなんで、正直このTV版は嫌いなんだが、原作ファンとしては一応見ておかないとイカン、という気持ちもあって、悩ましいトコ。
当時、若山富三郎は持ち役を奪われたことを激怒、ヨロキンとは幼馴染みだったそうだが、一時は「錦之介を殺す!」とまでいきまいたそうで。一番悪いのは、若山さんに了承を得ずに勝手に原作権をTV制作会社・ユニオン映画に売った小池一夫と彼のプロダクションなのだが、当時勝プロを率いていた当事者・勝新太郎も実兄に相談もせず、話を呑んでしまったらしいから、コトはさらにややこしくなった。東宝はTVと映画は別だから、映画でも大団円まで若山さんにやってほしい、と交渉したものの、若山さんは結局それを拒否したそうな。惜しいかな、おしいかな。小池一夫も罪なコトをしたものよのぅ。


萬屋錦之介版のTV版も全体としては悪くない雰囲気。錦之介自身は重量感あふれる素晴らしい役者だし、殺陣も原作どおり脇構えだったりしないまでも、フリが大きく見栄えがする。しかしながら、いかんせん錦之介には、若山さんが持っていた“冥府魔道”な「たたずまい」がないんだよなぁ。梨園の出にありがちな、ついつい大見得を切ってしまってるところがあるというか。凄みはもちろんあるんだけど、ヤケに重々しいだけで、あの拝一刀にはなりきってないような。もっとも、コレは映画から見てしまってるせいかもしれない。メイクが悪いのかねぇ?


「われら父子、冥府魔道に生きる者。六道四生順逆の境はもとより承知のこと……」
ううむッ、素晴らしきかな! わが座右の銘であるッ!(だから幸せになれないのね……)