真夏も過ぎて、秋風吹いて、海には水母も一杯で、いつしか人気もない渚。砂浜に置き忘れられたビーチパラソルとリクライニング・チェア。
ココはいずこや、彼岸か此岸か、涅槃の境か。永遠に打ちては返す波。波打ち際に出でてたたずめば、頭よぎるはおのれの人生の「無常」。仲間も女も家族も捨てて、すべての縁を断ち切って、ただひとり、大海に漕ぎいでて、はるか彼方の黄金の国、今宵その夜*1、行ってみたいと思いを馳せる。
……波しぶき。ふっと我にかえる。オレにそんなコトできるワケがねぇじゃねぇか! あの世でダニーとブルース*2に笑われちまうぜ! わかったよ、オレはオレの道をゆく、ロックンロールで自由な世界を切り裂いていくぜ!*3
へこたれてしまっちゃだめだよ*4、今日はダメだが明日もあるさ! 男一匹生まれたからにゃ、ギター1本両手に抱え、おのれの意気地、見せてくりょうと覚悟を決めて、諸々悲しき事ごとも、背なで断ち切るいじらしさ*5
だんだん歳はとってゆく*6。それでもだけども、何時いつまでも、錆びつくよりは燃え尽きたい*7、なぜってオレはニール・ヤング! とこしえに「若くあれ!」と親から名前を受け継いだ。
恋だけがオレの心を引き裂く*8、日のように月のように、風のように雨のように、そして時には嵐のように*9、これからも、唄い、弾きまくって生きてくぜ!
……カナダが生んだ世界最高のロックンローラー、ニール・ヤングがなぜにこれほど、オレみたくダメ男を魅了してやまないのか。それは、彼が輝かしき栄光の道ではなく、ひたすら人生裏街道、あえて<ダメ道>を歩み続けるからなのだ。
人は、ダメゆえに、ロックする。
人生における「ダメ」を振り払うために、ロックはあるのだ。
ロックの「若さ」をいつまでもいつまでも体現する男、ニールこそ、わが至高至尊のロック・アイコン、わが人生における「希望のともしび」なのである。
「渚にて」はニール・ヤングにとっても、人生をロックに賭ける「決意」を、静かに、しかし力強く封じ込めたアルバムだった。それがオレにはわかるんだ。残暑ただなか、ひとりしんみり、コイツを聴いているとね。
ロックがわからねぇボンクラは、ただの阿呆だ。
「ダメ」ってのは、こういうことさ。
ボンクラ度:☆☆☆☆☆
ワビサビ度 :☆☆☆
ロックの魂度 :☆☆☆☆☆
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*1:アルバム「今宵その夜」のタイトル曲「Tonight'S the Tonight」より。
*2:ドラッグであの世行きとなった故ダニー・ウィットン(クレイジー・ホース、ギター)&ブルース・ペリー(ローディー)のコト。名作「今宵その夜」は彼らに捧げられた。
*3:「Ronkin' In the Free World」@「フリーダム」
*4:「Don't Let It Bring You Down」@「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」
*6:「Heart Of Gold」@「ハーヴェスト」
*7:「Hey Hey, My My
*8:「Only Love Can Break Your Heart」@「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」