『座頭市物語』第3話「祥月命日いのちの鐘」

カツシンが本TVシリーズで初めて監督を手掛けた記念すべき一作。

女優同様に、男優にも惚れ込んで、いとおしむように撮る。それがカツシンスタイル。ちなみに、TV時代劇の初演出は実兄・若山富三郎の『唖侍・鬼一法眼』第1話で挑戦済み。

原作:子母沢寛
脚本:高橋二三
撮影:牧浦地志
監督:勝新太郎
音楽:富田勲
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
青竹の紋次:北大路欣也
千代:今出川西紀
新吉:青山良彦
おまさ:外崎恵美子
中森の源八:江幡高志
代貸し:遠藤征慈
殺しにくる集団:チャンバラ・トリオ
中年浪人:藤沢薫
中森の子分:阿波地大輔
ほか

今や北海道犬のパパになってしまったが(汗)、若き日の北大路欣也はどうにも肩入れしたくなるような荒削りな魅力がある。ラストの繊細すぎるカット(あえて説明しない)は、カツシン一流の演技と相まって喪失感のようなものを見事にとらえていて涙まで誘う。
、、、しかし、あえて冷ややかな目線で見れば、全体に脈絡がないとは言える。カツシンの演技の呼吸や間合いまでじっくり見ていないと気づかないほどの微妙な流れかもしれない。
仲間のカツドウヤ諸兄は現場ではカツシンの挑戦欲にプロとして応えたが、結果的にそんな「わかりにくい」演出はあまり認められず、残念ながら概して評価しなかった。今でこそ肯定的に讃えられてもいるが、当時はワケがわからないと頭を抱える向きも多かった。かつて森田富士郎氏と西岡善信氏のインタビューをテープで聞いたこともあるが、そのあたりは(天才だと言いながらも)きちんと分析を下していた。
キャメラ大映時代劇を支えた名キャメラマン、牧浦地志。マニアなら森田富士郎との違いなどを見つけてみるのも一興だろう。
追記。この日はカツシンの誕生日であった。生きていたら80歳。そんな記念すべき日に「祥月命日いのちの鐘」なんて座頭市のルーツにまつわるエピソードが放映されるとは…いや、それともBSフジ側が狙って放映したのかな??