『新・座頭市 III』第10話「市の茶碗」


原作:子母沢寛
脚本:二州基夫、石田芳子、奥村利夫
監督:太田昭和
撮影:渡辺貢
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
お近:いしだあゆみ
夢七:江原真二郎
夢三:植頭実
伝八:浮田左武郎
富右衛門(隠居):曽根晴美
玄信:北見唯一
久兵衛高野真二
茶店の主人:沖ときお
茶店の女中:三田真澄
泥棒:松尾勝人
武士:筑波健
ほか

*BSフジのクレジットでは監督:国原俊明になってました。以前のデータも後で修正します。


土佐藩お抱えの陶工夢七(江原真二郎)は、主君の命令で深みのない規格品ばかりを焼かされるのが、つくづく嫌になった。そんな天才肌で名人気質の夢七の孤独を慰めるのは、流れの酒場女お近(いしだあゆみ)の情けだった。お近の死んだ祖父も陶工だった。捨てた故郷にはまだ窯場が残っていた。世俗にわずらわされない山奥で、夢七にじっくりと納得のゆく茶碗を焼かせてやりたい。夢七はだまって藩主の庇護を離れ、お近と彼女の故郷に駆け落ちした。弟子の夢三(植頭実)が従った。寵愛する夢七の勝手な行動に、もちろん藩主は烈火のごとく怒った。屈強の藩士に夢七の追跡を命じた。一行には、士分に取り立てられ名前も奥山伝八郎と変えた、夢七のかつての弟子伝八(浮田左武郎)も混ざっていた。人里離れた山奥の窯場で夢七は、一日中俗事に惑わされず、焼物の制作に没頭した。せっかく焼き上がっても気に入らなければ全部捨てた。これでは暮らしが立たない。夢七にたまには好きな酒も飲ませてやりたい。夢七が廃棄処分を命じた茶碗を、お近は夢三とそっと宿場に売りに行く。茶碗は道具屋の久兵衛高野真二)の仲介で金持ちの茶人の隠居(曽根晴美)に渡った。隠居の療治に呼ばれた座頭市勝新太郎)は、その茶碗の感触に、激しいショックを覚えた。ほのぼのと懐かしく、どんなにつらくとも生きる喜びが湧いてくるような手触りだ。いったいどんな人間が焼いたのだろうか。市は茶碗の作者に興味を持った。山里を分け入り市は苦心の末、夢七の窯場を訪ねた。夢七、お近、夢三、そして市の奇妙な共同生活が始まった。“心眼”の見よう見まねで茶碗を焼く市。窯場を追っ手が包囲した…。