『座頭市物語』第22話「父と子の詩」

原作:子母沢寛
脚本:高橋二三、宮嶋八成
監督:黒田義之
音楽:富田勲
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
黒川鉄次郎:田村高廣
山形屋源三:田中邦衛
黒川千之助:山下雄大
お志乃:原田あけみ
下野屋庄作:稲葉義男
お春:高沢順子
中沢:菅貫太郎
勘助:山本清
紋治:暁新太郎
ほか

謹厳実直な、関八州取締出役黒川鉄次郎(田村高廣)の存在が、裏面で悪いことも適当にやる小悪人の下役の中沢(菅貫太郎)には何とも目ざわりだった。目ざわりは、悪貸元山形屋源三(田中邦衛)にも同じだった。中沢は山形屋と示し合わせると男やもめの黒川に、彼がほのかに思いを寄せる茶屋女お志乃(原田あけみ)を取り持つ。石部金吉が一度女の色香に迷いだすとこわい。中沢・山形屋両人の策略は図に当たり、お志乃のために役職まで棒に振るはめになってしまった黒川は、今では、山形屋一家のあわれな用心棒だった。そんな敗残の父の姿を、悲しげに、そして批判的に見守る一子千之助(山下雄大)。「“鬼侍”の子」と悪童どもに囃したてられ、子供心にもじっと孤独感をかみしめる利発な千之助には、はたご「下野屋」の亭主庄作(稲葉義男)と娘お春(高沢順子)だけが味方だった。例によって子供好きの座頭市勝新太郎)は、道中、千之助と友達になる。ませているようでも子供は子供。実の父親のように甘えるいたいけな千之助が、「オレにもこんな子供がいてもおかしくはないのに」と、旅の市を妙に感傷的にさせる。
 さて、好色な中沢は小町娘のお春にえらいご執心。中沢は、同じ穴のむじなの「山形屋」と結託、時代遅れの律儀さがわざわいして左前の「下野屋」に、おためごかしに大金の融通をさせる。返済期日に難くせをつけ、中沢はお春を、「山形屋」は「下野屋」の身代をまんまと手中に収める魂胆である。「山形屋」は、悪計をかぎつけた市殺しを百両で黒川に命じる。しかも、成功しても千之助をおとりに報酬は渡さないという筋書きになっている。あまりの小汚さに市の怒りは…。