プロちゃん・グレたんの魑魅魍魎百鬼夜行大放談!:第6回「ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター&ピーター・ハミル」

プロ:プロですッ!
グレ:グレですッ!
プログレ:ふたり揃ってプログレです。
グレ:5大バンド制覇したんで、コレからは個々にさらに深ぁ〜いプログレの泥沼に入っていくつうことで。しょっぱなはヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター(VDGG)&ピーター・ハミルでいきます!
プロ:ヘヴィなトコから行くねんなぁ〜もちっとほかにないんかぃ?
グレ:だって、お前とベシャれるのって、このへんどまりじゃん!

 
●英国のドアーズ!? ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター

 
グレ:いきなりですが、ファーストはコレ。「エアロゾル・グレイ・マシーン(The Aerosol Grey Machine)」(68年)

Aerosol Grey Machine (Reissue)

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プロ:グループ名はオランダの静電気型発電機の発明者の名前。いきなりマシーンと来た。なんだかよくわかんねぇ、サイケ入ったフォーク・ロック。デビュー前に楽器を盗まれて、必死こいて出したアルバム。
グレ:今はCDでも出てるけど、一時はレコードとかプレミアものだった。リーダーのハミルが書く曲はわりかしイイ。で、セカンドが「精神交遊(The Least We Can Do Is Wave To Each Other)」(69年)。いきなりイカす邦題!

ザ・リースト・ウィ・キャン・ドゥ・イズ・ウェイヴ・トゥ・イーチ・アザー(紙ジャケット仕様)

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  • アーティスト: ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター
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  • 発売日: 2005/07/21
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プロ:原題「我々にできることは互いに手を振り合うことのみ」が、なぜか「精神交遊」とか高尚深遠なる四文字熟語になるトコが、いかにもプログレらしい。ジェネシスより前年にカリスマレーベルに入って出したアルバム。プログレらしくなるのはココから。ジャケからいきなり目玉オヤジ炸裂!
グレ:『ゲゲゲの鬼太郎』かよ! このバンド、とにかくハミルのボーカルに寄り添うように、演奏が展開する。このスタイルは解散まで不変。ヒュー・バントンのオルガンとデイヴィッド・ジャクソンのサックスの絡みが異様な迫力。オルガンが荘厳な響きのせいか、教会音楽風でもある。
プロ:地下のカルト教団って感じだけどな(笑)プログレファンはネクラばかりだけど、こいつらの音楽、ホントはポジティブ。ハミルの絶叫ボーカルは相当クセがあるから、敬遠しちゃうヒトも多いけど。
グレ:「Refugees」は名曲。ちなみに、カリスマレーベルはこいつらのマネージャーだったトニー・ストラットン・スミスが創設した組織。要するに、VDGGなくして、ジェネシスはなかった!
プロ:そういう意味でも、VDGGはユーロプログレ界においては偉大な存在。
グレ:さて、サードは「天地創造(H To He,Who Am The Only One)」(70年)

天地創造(紙ジャケット仕様)

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プロ:どうしてまぁ、こぅプログレのアルバムには誇大妄想な題名がつけられるのかね? まぁ、元素記号引用した原題からして説教臭いんだけどさ。中身もいきなり「Killer」とか、「House With No Door」とかいかにもうっとうしい曲名が並んでる。青臭いアルバムだよな〜。
グレ:おどれ、ホントは好きなクセに悪口しか云えないな? ちなみに、ロバート・フリップがギターに参加してる。
プロ:おお、ピーター・ガブリエル以前に、フリップの標的に! あやうし、美青年ハミル! 
グレ:やおいネタ禁止! で、4枚目が名作の誉れ高い「ポーン・ハーツ」(71年)
ポーン・ハーツ(紙ジャケット仕様)

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プロ:3曲しか入ってない時点で萎える。要するに、1曲全部長いんだよ! プログレの悪しき慣習。インストの「Theme One」はその中では短い小曲で何気に名曲だったのに、CDでは入ってない。名曲「Man-erg」ではフリップのイカれたギター炸裂!
グレ:ベースのニック・ポッターが抜けて、ベース部分はオルガンのヒューが兼任。ドアーズみたい。ジム・モリソンの役割がハミルね。本人たちは意識してたのかね?
プロ:ハミルは詩人としても名高いけど、実は曲から先に作るらしい。で、自分の原点はブルーズだって云ってる。泣かせの曲書くのもそのへんに理由はあるみたい。まぁでも、スタイルが全然違うし、関係ないでしょ。
グレ:で、VDGGはいったん解散。ハミルはソロ活動本格化させるけど、コレについては後回し。75年に再結成して出したのが「ゴッドブラフ(Godbluff )」

ゴッドブラフ(紙ジャケット仕様)

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プロ:オレ、文字だけジャケって嫌い。手抜きじゃん! 4曲しか入ってないけど、演奏はテンション高くてカッコいいけどね。この当時のライヴがDVDでも出てる。サックスやフルート抱え込んで吹きまくるジャクソンがカッコよすぎ!

Godbluff: Live 1975 [DVD]

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グレ:再結成第2弾が「スティル・ライフ(Still Life)」(76年)
スティル・ライフ(紙ジャケット仕様)

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プロ:「静物画」の題名どおり、静謐で内省的な大曲が並びまくり。オレが最初に聴いたアルバム。唯一無比にして唯我独尊な音世界、ハミルとVDGGが生んだ最高傑作でしょう。
グレ:じゃあ、この後の「ワールド・レコード(World Record)」(76年)「静粛/歓喜(The Quiet Zone,The Pleasure Dome)」(77年)、唯一のライヴ盤「ヴァイタル(Vital)」(78年)に関してはオミットでいいね?

ワールド・レコード(紙ジャケット仕様)

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プロ:地球だの宇宙だのジャケにしてるワリにゃ内面世界どっぷりモードで重くて、疲れる。ただ、オルガン&サックスのバントン&ジャクソンが抜けて、オリジナルメンバーのベーシストのポッターが復帰して、ヴァイオリンにグレアム・スミスが入って、よりヘヴィなロックになったから、マニアは聴き甲斐あり。
「ヴァイタル」はイイぞ! 演奏がパンクつうか、全体に突っ走りまくってて破綻しきってる。プログレファンならずとも、一聴の価値はあるね。

VITAL-LIVE

VITAL-LIVE


 
●英国最強のボーカリストピーター・ハミル

 

グレ:では、ハミルのソロから。作品数多いから重要作のみね。デビュー作はパンク雑誌の題名になった「フールズ・メイト(Fools' Mate)」(71年)
プロ:チェス盤の表紙で有名なヤツ。VDGGと違って小曲ばかり。バンドメンバーが全員参加してるワリに、演奏はギター&ピアノの弾き語りメインで、地味すぎてオレは好きじゃない。曲はイイけどね。

フールズ・メイト(紙ジャケット仕様)

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グレ:サードが「The Silent Corner and the Empty Stage」(74年)
プロ:コレは傑作! ハミル、エレキギターに本格開眼! ギター伴奏メインだけで、コレだけ超ヘヴィな唄を聴かせられるアーティストはハミルくらいでしょう。聴き通すのはキツいけどね。10代最後にコレに出会って良かったよ。ジャケはケツみたいでやらしいけどな。
グレ:余計なコト云うな!プロ:次作「In Camera」(74年)も名作だけど、マントまとって仁王立ちとナルシシズム爆発のジャケは萎えなえ(笑)ハミルって、唄に魂込めすぎというか、演技過剰系がダメなヒトは絶対受け付けられない。
イン・カメラ(紙ジャケット仕様)

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グレ:で、次が知られざる英国初のパンク・アルバム「Nadir's Big Chance 」(75年)
ネイディアーズ・ビッグ・チャンス(紙ジャケット仕様)

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プロ:セックス・ピストルズジョニー・ロットンが唯一認めるボーカリストピーター・ハミルだったのは有名な話。全曲メチャ、シンプルなロックンロール! ハミルはこの頃から自己投影できる別人格(アルター・エゴ)をつくって曲作りするんだけど、ココで登場するのが内なる永遠の10代少年<リッキ・ネイディアー>。ギター持たせりゃ天下無敵! っておめでたいキャラ(笑)ハミルってギター、マジでヘタなんだよ! コレだけ気持ちだけで突っ走れるアーティストはいないね。
グレ:ジャケが強烈なのが「The Future Now」(78年)
ザ・フューチャー・ナウ(紙ジャケット仕様)

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プロ:半分だけヒゲと体毛を剃ってる(爆)三十路突入記念作で、1曲目「Pushing Thirty」はブギ入った軽快な名曲。ハミル最高のバラードが聴ける題名曲とか名曲ぞろい。サックスのジャクソンとバイオリンのスミスだけがサブで参加してるんだけど、限られた音でアイデア詰め込んだ曲が並んでる。シンセサイザーをいじくってつくったらしい環境音(?)と唄だけで押し切る「A Motor-Bike In Africa」なんて最高! 個人的にはハミルのソロ中、最高傑作。
グレ:この頃、VDGGも解散して、ハミルは名実共にソロ・アーティストになる。VDGGはヨーロッパでは売れたから、その収益で自宅にスタジオを構えて、自主レーベルをつくって定期的にアルバムを出してライヴ活動を続けるようになった。
プロ:元祖「ひとりできるもん」アーティスト(爆)80年代初期までは「A Black Box」(80年)「Sitting Targets」(81年)「Enter K」(82年、※リマスター発売!)、そしてこの時期の集大成たるライヴ盤「The Margin」(85年)と、ギター主体でゴリゴリでコンパクトなハードロックを展開。おなじみ、アルター・エゴは王様(King)の意味の<K>(笑)当時のメンツは、ハミルにいまだ影のようにずっと寄り添うドラマー、ガイ・エヴァンス、そしてベースのポッター、そしてウネウネ・フレーズが素晴らしい異能ギタリスト、ジョン・エリス! ダチのピーター・ガブリエルと交流深かったのもこの頃ね。
ア・ブラック・ボックス(紙ジャケット仕様)

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シッティング・ターゲッツ(紙ジャケット仕様)

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Enter K

Enter K

The Margin

The Margin

グレ:この後はどんどん地味になるんですが、どうですか?
プロ:フェアライト導入した当時、90年代初期までは音があまりにショボいんで、正直辛いな。86年に初来日してるけど見てない。
グレ:88年、ジョン・エリスと再来日したヤツは見たかったね。
90年代半ばまではプログレファンには受難の時代だったな。ヴァージンレーベルの作品が軒並み廃盤になって、VDGG&ハミル作品が確保できなくなった。オレたちはちょうど学生だったから、一番冷や飯食わされた(笑)じゃあ、シメはチョー久々の国内盤リリースだった「クロス・マイ・ハート(X My Heart)」(96年)にしましょう。

プロ:サックスとバイオリン、合わない伴奏楽器ふたつをうまく溶け合わせた意欲作。ようやく、音の面でもシンプルで聴きやすくなってきた。最近作までずっとピアノの弾き語りっぽいのが多いけど、ボーカルが「深化」したから、聴き込むと感動モノ。大鷹俊一センセイだけに誉めさせるなァ勿体ないって(爆)
グレ:3度目の来日公演はようやく参戦できたんだよな。バイオリンのスチュアート・ゴードンとふたりだけだったけど、アレだけ破壊力ある歌声、聴いたことないよ!
プロ:噂に聞いたマイクなしで唄ったアンコールの「Again」、泣いたね。
グレ:ただ去年、5度目来日するハズが心臓病で倒れたという。
プロ:復活はしたけどね。そりゃ、あんなガイコツみたいな細身で肺が破れそうな絶叫歌唱するんだから、無理ないよ!
グレ:つうわけで、長くなりましたが、最後にイチオシのライヴ盤をひとつ。
プロ:「The Peel Sessions 」(95年)。一部除いて、ギターとキーボードだけのソロライヴだけど、コレ聴けば、ハミルの凄みがわかるハズ。
破壊的なボーカルってのはこういうのを云うね。英国プログレ界が生んだ、最高のボーカリスト、それがハミルですよ。
The Peel Sessions

The Peel Sessions

☆ハミル様の公式サイトはこちら→http://www.sofasound.com/
(つづく)