梅安ッ! てめえ、飲み喰いしとるだけやないけ!

無聊を慰めるべく、最近は文庫本なぞ拾い読み。実はここ数年、よほどじゃないと小説を読むのは気鬱だったのだが、読みやすい時代小説あたりからリハビリモードに入った次第。相変わらず、何ページか読むとすぐに眠くなるんだが(笑)
笹沢左歩「帰って来た紋次郎」「同・かどわかし」
池波正太郎「梅安蟻地獄 仕掛人藤枝梅安
小林信彦「イエスタデイ・ワンスモア」
クライヴ・バーカー「ゴースト・モーテル」
司馬遼太郎司馬遼太郎の日本史探訪」

などなど。あとは新書で出てる雑学ものとかを毎日パラパラ。
それにしても、藤枝梅安、おそるべし。いや、針1本で命を断つその「仕掛け」の手並みのあざやかさゆえではない。仕掛けの相談だの下見だの称して、これは、と目をつけた小料理屋だの飲み屋だのに入り浸ること、いりびたること。肝心の仕掛けなんて一瞬、日がな飲み喰いばかり、本業の医業にも精こそ出しているとはいえ、何かというとウマいモン喰って、舌鼓を打ち放題。で、あとはナニしてるかってぇと、ナニしてるんだなぁ、コレが(爆)。肉置き(ししおき)豊かな年増の愛人と日がなしっぽり濡れてたりするわけよ。
いやね、日々生死の境に常に身を置く仕掛人の身の上、刹那せつなの快楽にも一心一身を投げ打つという、その生きざまこそ男たるべし! といった人生観も反映されているのであろうが、それにしても飲み喰いさせすぎでしょう>池波先生 いかな美食家で鳴らした御大といえど、あまりに御自分の趣味に走りすぎじゃないかって。別に禁欲趣味はないし、オモロイからいいんですけど、どうしてもツッコミたくなったので。
個人的には、終始寡黙、メシなぞには一切こだわらず手早くかっこむのみ、なんていう紋次郎の生きざまのほうに魅了される。文体や話運び、細部の描写なども、笹沢さんのほうが精緻かつリアルで好みですし。
あと、小林信彦さん「イエスタデイ・ワンスモア」は、回顧趣味のカタマリのオレとしては、読んでて思わずフッと涙な箇所もあったが、構成等、各所ちょっとユルユル甘々かなぁとか。元ネタくさい映画『ある日どこかで』とか、「リプレイ」とか、タイムスリップものって好物だけど、ツボに入る箇所がユルいのは勘弁ってトコかな。