『裸足の1500マイル』

BS2で放映されたので、ピーガブことピーター・ガブリエルの音楽聴きたさにチェック。
サントラも地味すぎる内容でほとんど聴き返さないでいるのだが、実際、劇中でもスコアがあまり前面に出ることはなく、控えめ。かといって、スコアが画面にうまく溶け込んでいたか、というとそういうわけでもなく、ちと隔靴掻痒というか、そんな印象を受けた。
エンドクレジットに流れる音楽はいかにもピーガブ・サウンドな楽曲でホッとさせられたけど。アボリジニが主役の映画だからって、ディジェリドゥとかあえてフィーチャーしなかったのは奏功した様子。

監督はフィリップ・ノイス。最近の仕事ぶりは把握できてないが、正直、いわゆる映像派と言うにも中途半端な力量の人ではあり。
実話の映画化だけに、劇的な演出は抑えぎみにしようという意図はわかるのだが、各所、語りとして不充分な面がやたら見受けられ。どうせ再現映像にしかならないのだったら、もう少し思い切りよくドラマティックにすべきだったのでは?

監督よりも入れ込んでいたかもしれないのがキャメラマンクリストファー・ドイル。見ている最中はうっかり彼が撮っているのを忘れていたが、クレジットで名前を見て、いかにもドイルらしい映像構成の連続ではあった、と納得。
ただ、敵役ケネス・ブラナーとの対面シーンでのヒロインの主観ショットなど演出サイドの要請っぽい無用なキャメラワークがうっとうしい場面もあったり。ウォン・カーウァイ作品等での傑出した力量を知っている人間としては、正直、評価するほどの出来映えではないか。光線の取り入れ方や色味の加減等、悪くなかったとは思うけれども。。。

おそらく水も食料も欠乏していたであろう、荒野をゆく少女3人の長い旅路中の苦闘もほとんど描かれてなかったり、展開にメリハリが効いてなかったせいもあって、ラストも感動まではできず。画面が暗すぎて不明瞭だったし(苦笑)

いちばん感動的なのはエンドクレジットで登場する、実際の本人らの姿だった。
「現実は小説よりも奇なり」、、、実話の映画化は得てして真実以上の感動を呼び起こさないパターンはよくあるが、本作はあくまでも映画と考えれば、もうちょっと語りに情をこめるなりして、しっかり「泣かせて」くれればよかったかなぁ、というのが正直な感想。
ピーガブの音楽、名手ドイルのキャメラが冴えなかったのは演出の問題だったんでしょう。具体的にはケン・ローチあたりを見習うべきですかなぁ、と。。。 

内容といい、物語といい、嫌いになれないタイプの映画だけに残念作。*1

*1:映画は今年は劇場で1本も見てない(!)し、正直、時代劇と吹替洋画のごく一部しかチェックする気力がなかったりするのだが、まぁ、見てしまった作品についてくらいは書いてしまったらのっけてみることにする。荒らさないでね(汗)