『新・座頭市 III』第9話「雨の船宿」

原作:子母沢寛
脚本:中村努
監督:森一生
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
卯三郎:山本圭
三蔵:須賀不二男
お松:根岸とし江
軍治:藤岡重慶
藤助:桑山正一
手代:広瀬昌助
乾分:滝譲二
若い男:加藤正記
男の子:竹本英生
その母親:三笠敬子
ほか

長雨で川止めとなり、その船宿は混雑していた。座頭市勝新太郎)は中年の旅の男と相宿になった。男は岡っ引きの三蔵(須賀不二男)だ。鬼岡っ引きでとおっていた。三蔵は房州小湊の漁師卯三郎(山本圭)を追っていた。痴情関係のもつれから恋人と相手の男を殺し、他国に高飛びしたのだ。百発百中を誇る三蔵にとって、卯三郎を取り逃がしたことだけが一生の不覚だった。三蔵は草の根を分けても卯三郎を召し捕り、それを最後に十手を返上するつもりだった。その執念に神がよみしたのか。逃亡者・卯三郎は目の前にいた。予想だにしなかった。何と船宿の船頭に住み込んでいた。「逃げて!」卯三郎に人知れず恋心を抱く女中のお松(根岸とし江)が悲痛な叫び声を上げた。宿泊客の旅の女(三笠敬子)が連れていた男の子(竹本英生)が高熱を出した。悪性の破傷風だ。一刻の猶予もならない。医者は対岸まで行かなければいないのだ。だが、逆巻く濁流に船を出すのは無謀この上なかった。幼な子の尊い生命は旦夕に迫っている。「いいえ、船は出します!」。卯三郎がきっぱりと言い切った。「てめえ逃げる気だな」。そうはさせじと三蔵が卯三郎の前に立ちはだかった。そして…。