『座頭市物語』第19話「故郷に虹を見た」

原作:子母沢寛
脚本:池田一朗
監督:井上昭
音楽:富田勲
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
壮吉:藤田まこと
お志津:真野響子
清次:河原崎建三
仁平:浜村純
板鼻の岩五郎:織本順吉
松吉:長谷川浩
ほか

中仙道板鼻宿、料亭「ふくべ」は、いっこく者だが名人気質の主人仁平(浜村純)の包丁さばきも冴え、店を手伝う子供達壮吉(藤田まこと)、清次(河原崎建三)、お志津(真野響子)の三人兄妹の仲もいたって良く、日ごとに繁盛していた。そんな時、ひとつの事件が起こった。血気盛んな清次が、酒席で店の悪口を言った商売敵の「千鳥屋」を刺殺したのである。弟思いの壮吉は清次の罪をかぶると、あとに残った仁平、お志津のことをくれぐれも頼み、包丁一本さらしに巻いて板前修業の旅に出た。実は、清次、お志津は仁平の後妻の連れ子で、壮吉とは血のつながりはない。今は亡きその母は、実の子の清次たちを二の次にして、生さぬ仲の壮吉を可愛がってくれた。兇状旅に出るのは、その霊前へのせめてもの手向けのしるしだった。
 それから三年。旅の空でみっちり板場の腕をみがき、懐かしい故郷へ急ぎ旅の壮吉は、座頭市勝新太郎)と道連れになる。さて、壮吉が夢にも忘れることのなかった故郷だが、帰ってみると、「ふくべ」は土地の顔役板鼻の岩五郎(織本順吉)に乗っ取られ、何と女郎屋に衣替えしていた。無理に誘われた岩五郎の賭場でいかさまに引っかかり、清次が莫大な借金をつくってしまったのだという。おまけに年がいもなく岩五郎はお志津に強い執心。言うことを聞けと日夜しつこくせめ立てる。卑劣な岩五郎は、今はすっかり心もすさみきっている清次をけしかけ、邪魔な壮吉を亡き者にする魂胆。当然市には、岩五郎の悪どさを見て見ぬふりなどできそうもない…。