『坂の上の雲』、BSで見たのでオレ的には先ほど大団円。
ずっと手出しができないまま社会人になってからやっとこさ原作を読み、映像化を知って待ち望んだこの10年以上。長かった。根岸でのひとつの情景場面、長年ずっと映像化されることを夢想し、感情移入してきただけに思わず涙。
もっともいざ終わってみて、作品全体としての感想は…すみません、こちらの思うところも語りきれないので放映期間分、3年ほど下さい(爆)
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一部、先にメモ程度のものを。ネタバレありなので御注意をば。
以下、やや批判的なことから書いてますが、映像化されたからこそ語れることなので。少なくともテレビドラマ史上には残っていい、意義深すぎたプロジェクトだったと思っています。
今回の『坂の上の雲』で最大の見せ場ではあったかもだけど、実は戦闘場面はまだまだ減らすべきだったかもしれない。二百三高地の凄惨場面の連続はもちろん、特に日本海海戦場面は映像的には現状で最高水準を見せられたのかもしれないが、あるいは映像としての表面的なインパクトばかりに目がいきすぎだったのでは? と疑念も湧くからだ。日本海海戦と銘打ちながらロシア側の惨状に目配りして、日本の歴史的大勝利としてではなく、日露両国にとって悲劇でしかなかった面を強調する、新機軸の描き方ではあったのだろうが。
いっそ子孫の後日談を踏まえた「ひとびとの跫音」と一体化して描けていたら、司馬遼太郎の意向にも沿う日本近代史の一大名篇となったと思うんだが。今回の配役であれば、カンノちゃんを語り部に描くべきだったかもということ。
渡辺謙のナレーションは、司馬遼太郎の原作と関連著作やエッセイからピックアップした文章をまんま読ませることで「原作者・司馬遼太郎」の思いを明確に代弁させたとおぼしきものだが、結局のところ、どこまで奏功したかはかなり議論の余地がある。司馬遼太郎が徹底して肯定的に描いたところと逆に異常なる憎悪をこめたところ、それが視聴者には何がどこまで伝わったかと。
ザックリまとめれば、世界史をも変えた明治期日本の栄光を「軍部が暴走し、統帥権を悪用して潰した」というのが司馬史観。司馬遼太郎が映像化を拒否してたのは、そんな歴史的命題まで踏み込んで描けるわけがない、と見越していたからだろう。
もし可能なら、今回と同じ配役で後日談「ひとびとの跫音」も映像化できれば、あるいはフォロー可能な部分かもしれないが。草葉の陰で司馬遼太郎も喜ぶのではないか。
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菅野美穂扮する正岡律は女優生活でも最高のハマり役と思う。1時間半ほどの単発でもいいから、ぜひ実現してほしいものだ。
もっとも、菅野美穂を活かそうとするあまりだったか、野沢尚の初稿からすでにあったとおぼしき、夏目漱石との会話場面は今後も物議をかもしそうだ。もしかしたら取材で明らかになった(漱石ではないにせよ門人同士などで)実際にあったやりとりの可能性もあるが、原作にはあんなシーンはないので。というより、律と漱石が同席した場面自体ない。戦闘場面からの繋ぎの場面としては成立しているが、やや唐突な感も否めなかった。漱石は口数が多くなかった人のハズだし。
映像としてはカッチリと出来ていたが、疑問点が残る箇所も多々。特にシメは、構成面で原作から飛躍してでも一考の余地はあった。エンドクレジットのアルプスのショットは最初から最後まで疑問でしかなかったし…山紫水明の国のイメージでも出したかったのか、どうか。
「坂の上の雲」の「雲」とは山脈に雄大に浮かぶものではなく、せいぜい根岸の子規庵近くの坂道で小さな町家の屋根瓦の向こうにぼんやりと漂っているものだったのではないのか。司馬遼太郎自身は厳密に規定し、描写しているわけではないが、そんな風に思える。
だから、自分は帰国した真之が根岸の子規宅から墓参する一場面こそがラストカットと思い込もうとしていた。そこに若き日の子規との日々が回想場面として挿入されるという。
坂道とは子規が眠る田端の寺の墓地の坂かもしれず、そうであってもよかったであろう。そこからパンニングしたら海原へ続く雲に連なるという、そんなシーンではどうであろう…。
もう二度と映像化は望めないのかもしれないが、最後の詰めで惜しまれるところはあった。。。