今年のベストテン。

Seventeen

Seventeen

いまや天下無双のハイパー箏奏者、八木美知依の最新作にして、純邦楽のみならず音楽の未来をも提示する力を秘めた歴史的一作。十七絃箏ひとつだけで、これほど深遠多彩な音世界が創造し得ることに驚嘆しきり。図抜けた録音とマスタリングの素晴らしさだけでも買う価値あり。繊細にして強靱、たおやかにしてしたたか、聴きかえすたびに発見がある一生ものの名盤。
Snow Borne Sorrow

Snow Borne Sorrow

デイヴィッド・シルヴィアンが実弟ティーヴ・ジャンセン、ブルント・フリードマン、そして北欧ジャズの雄アルヴェ・ヘンリクセンらをゲストに迎えたバンド、というかユニット。
03年発表のソロ作「ブレミッシュ」で新たに確立したエレクトロニカ路線を基調に、近年隆盛極める北欧ジャズ連の管楽器をフィーチャーした静かながら熱い演奏に乗って、いつもながら淡々と、しかし感情表現豊かにシルヴィアンが唄う。素晴らしい! スティーヴ・ジャンセンの力強い鉄壁無比のドラミングの存在感ゆえか、「ブレミッシュ」とはかなり違い、聴きやすく、親しみやすいのもポイント高し。
シルヴィアン、孤高の作風を極めた「ブレミッシュ」で諸事ふっきれたらしい。JAPAN以来迷走ぎみと揶揄されたこともあったが、ここへ来てようやくおのれが到達すべき境地に達したという感じ。

トンコリ

トンコリ

樺太アイヌ古楽器トンコリを用いてダブ/トランス風な音楽を創造するミュージシャン・OKIが、伝承曲をトンコリ独奏で再現することに挑んだ意欲作。トンコリという世にも稀な楽器の「素材」そのものの良さを最大限に活かしつつ、さらに古代から伝わるアイヌの曲をそのまま演奏しているにもかかわらず、OKIその人オリジナルの音楽となっている点が素晴らしい。OKIその人と彼に受け継がれた「血」そのものがトンコリを通じて具現化された、真のルーツ・ミュージック。

ライヴ・イン・パリ

ライヴ・イン・パリ

ブラジルの鬼才ミュージシャン、パリで行なった最新ライヴ作。ベースはキューバ期待の若手女性歌手でもあるジューサ、パーカッションはアルゼンチン人のハミロ・ムソット。最小限のバンドながら、多彩な表現力ある縦横無尽な演奏から繰り出される楽曲群に眩惑される。
Kicking Television: Live in Chicago

Kicking Television: Live in Chicago

新規参入ギタリスト、ネルズ・クラインが大活躍する最新ライヴ作。物憂げながらも芯が熱くて琴線ふるわせるジェフ・トゥイーディの曲と歌唱もさることながら、シャープでエッジの効いた演奏で終始ダレることなく楽しませる。

Grant Street

Grant Street

ルイジアナ出身の超絶スライドギター奏者の最新ライヴ作(<こればっか!)最小限のトリオ編成ながら、収録されたハコの熱気そのものが伝わってくるような、躍動感がたまらない。うねりまくるギターフレーズはどこまでもパワフルだが、眼鏡をかけた怜悧な容貌と相まって、どことなく理知的な響きも。ギターを弾いている周囲の空気感までしっかり感じさせてくれる音に感激。

ケレティギ・ジャバテ「サンジャ」

アビブ・コワテとのコンビでも知られる、マリの人間国宝級ミュージシャンのソロ。家族や本人たちのお手製というバラフォン(木琴)の素朴ながらも豊穣な、珠玉の音に頬がゆるむ。聴いているだけで安心してしまう、心が豊かになってくるような、ホンモノの音楽。

Wild Life

Wild Life

知る人ぞ知る“日本最強”の天才ギタリストの最新ソロにして初メジャー(!)作。
本作、とにかくギターの音がぶっとい、分厚い! ライナーの受け売りだが、アコースティックギターと同じ太さの弦を張っているというゆえんもあるのだろう。実際に間近で見ると、縦横無尽に走り回る指先から、一音のノイズもなく、流麗に繰り出されるフレーズにただただ聴き入るばかり、分厚さや重厚さよりも軽やかさと柔軟さを感じ入らされてしまうのだが、本作は趣きが若干違い、いかにもロック・ギタリスト然としたハードな音がぎっしり満載。
個人的には「プログレ」にして民族音楽色豊かな側面を全開させてくれたほうが、この方の個性はより際立つと思うのだが……あまりに巧すぎて、自然と聴き流せてしまえるのが唯一の難点かもしれないから。資質が違うのは承知だが、デイヴィッド・トーンあたりみたく、もっとゴリゴリに鬼怒無月にしか出せない音に挑戦して欲しい! と欲張ってしまう。
弾き詠み草

弾き詠み草

一聴するや、背筋にぞくり、とくる凄艶たる声。絶妙の間合いをもって奏でられる三味線の音にまたどきり、とさせられ。往年の邦画を漁り見たおかげで、山田五十鈴はじめ多くの女優が演じる三味線のうたなどは同世代の人間に比べれば見てきたつもりだが、やはりホンモノは違う、と認識させられた。何をおいても、この声だけは一聴に値しよう。
id:huraibouさんのところ(http://d.hatena.ne.jp/huraibou/20051129/p1)で知って、昨日早速購入。収録時間は30分に満たないが、こめられた情念というか、密度の濃さゆえに聴き通したらぐったりしたくらい。
1979年、中村とうようプロデュース。YMOを結成した当時の坂本龍一が起用され、ラストの大曲でブライアン・イーノあたりも彷佛とさせる無国籍なシンセサイザーを聴かせてくれる。

ルーネオロジー (紙ジャケット仕様)(BOM1501)

ルーネオロジー (紙ジャケット仕様)(BOM1501)

1997年、ルーネ・クリストファーシェン(Rune Kristoffersen、元フラ・リッポ・リッピ)によって設立された北欧きっての大注目レーベルのサンプラー
スーパーサイレント、アルヴェ・ヘンリクセン、スサンナ・アンド・ザ・マジカル・オーケストラ、スコーチ・トリオ、ハムクラッシュ等々、いま最も「旬」と評するべき、先鋭的なジャズがふんだんに聴けてお腹いっぱい! コレで1,500円はおトクすぎ! 興味ある向きは迷わず買い!

<今年のオレ的「お宝」>
1.ザ・ネックス「Aquatic」(525円)※サウンド・ベイ・リパプリック名古屋・上前津
2.ザ・ネルズ・クライン・シンガーズ「the NELS CLINE SINGERS : instrumentals」(490円)
3.ヴィンセント・ギャロ「ウェン」(390円)
4.アリ・ファルカ・トゥーレ「ザ・ソース」(300円)
5.ジョー・ジャクソン「ナイト・ミュージック」(500円)※お茶の水・ジャニス
6.マリアンヌ・フェイスフル「Blazing Away」(200円)
7.ザ・グラッシー・ノル「III」(315円)※吉祥寺ディスクユニオン
8.ドーナル・ラニー・クールフィン「ドーナル・ラニー・クールフィン」(690円)
9.ダイアー・ストレイツ「アルケミィ〜ダイアー・ストレイツ・ライヴ」(リマスター、1,180円)
10.フラーコ・ヒメネスfeaturingライ・クーダーヴァン・ダイク・パークス「フラーコス・アミーゴス」(210円)※新宿ディスクユニオン

特記以外は中野レコミンツ。今年もお世話になってしまいました。。。
名古屋ではサウンド・ベイ・リパプリック上前津店および金山店。ココはハッキリ云ってバナナレコードより断然オススメ。名古屋へお立ち寄りの際はぜひ一度チェックを! オレも帰省したら早速行きます!