高橋洋脚本『インフェルノ 蹂躙』(北川篤也監督)

異常カップルが美女を喰らう!? 鬼才・高橋洋の超問題作!!
『リング』シリーズ、『発狂する唇』『血を吸う宇宙』、さらに監督作『ソドムの市』はじめ、傑作・怪作を世に送り続ける鬼才脚本家・高橋洋。彼自身が最高傑作の1本に挙げるのが本作『インフェルノ 蹂躙』。日活のエッチ系Vシネマで発売されたシロモノだがあなどるなかれ。危険極まりない内容の凄まじさに戦慄することうけあい。
 無作為に狙いをつけた女を誘拐し、いたぶり尽くしたうえに殺す異常性愛者のカップル(由良よしこ、若松武)が、ある美人姉妹(白石ひとみ立原麻衣)を獲物に選ぶ。このカップルの異常性、および誘拐に至るまでのプロセスが凄まじい。街で標的となる女を探しては尾行し、住居をつきとめてからひそかに侵入して隠しカメラと盗聴器をセット。女の生活(特に性生活)を洗いざらい監視し、彼女の秘められた情交を覗き見ては自分たちも興奮してセックス。しばらく監視した後、拉致、監禁、暴行といたぶり尽くしてから、なんとカニバリズム(人肉食)までやってのけるのが何ともおぞましい。彼らが飼っている犬は、人肉の味を覚えて血の匂いを嗅いでは吠えたてる。カップルに扮した隠花植物のごとき由良よしこのたたずまい、ことあるごとにかすれた笑い声をあげる若松武が不気味で怖い。
 黒沢清も頭があがらぬという、“恐怖の帝王”たる高橋洋の本領が発揮された問題作だ。おぞましい内容ではあるが、シチュエーションのすべてを語り尽くす簡潔かつ鋭すぎる台詞の妙、抑制された演出のおかげで、ただの悪趣味映画には成り下がらず、極めて奥の深〜い作品に仕上がっている。『リング』シリーズで高橋洋の名前を知り、その作品世界に興味を持った人には是非みていただきたい一品。こんな奇抜でユニークなシナリオが書ける人は世界中を探してもそうはいないぜ!