<長編・連作集>※主な登場人物
1.「項羽と劉邦」(上・中・下、新潮文庫)※項羽、劉邦
「時代の風音」(堀田善衛・宮崎駿共著、朝日文芸文庫)
- 作者: 司馬遼太郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2001/09/01
- メディア: 文庫
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<短編>
1.「斬ってはみたが」(「アームストロング砲」所収)※上田馬之助
2.「弥兵衛奮迅」(「新選組血風録」所収)※富山弥兵衛
3.「果心居士の幻術」(「果心居士の幻術」新潮文庫所収)※果心居士
4.「飛び加藤」(同上)※飛び加藤
5.「逃げの小五郎」(「幕末」所収)※桂小五郎(木戸孝允)
6.「花屋町の襲撃」(同上)※“後家鞘”彦六(土居通夫)
7.「喧嘩早雲」(「馬上少年過ぐ」新潮文庫所収)※田崎早雲
「項羽と劉邦」は中学校2年生の時、初めて読んだ。正月明け、お年玉で買い込むや、以来2週間、通学中の車内、休み時間、帰宅後と我を忘れて読みふけった。クライマックス、自刎して果てる項羽の最期を読み終えて深夜、バタンキューと寝床に倒れ伏し、夢も見ずに眠りこけた。朝、目を覚ましたら、なんとまぶたが開かなかった(!)。驚いて、手探りで洗面所の鏡に向かうと、寝ている間に眼球からあふれた目やにが両目一面にこびりついていた(怖)。文面に目を凝らし過ぎ、眼球がオーバーロードしたのであろう。お湯で顔を洗い、まつ毛ごとムリムリひっぺがしてことなきを得たが、後にも先にも、あれほど根を詰めて読書にふけったことはない。一生忘れられぬ、わが人生で最高の読書体験だ。あれから20年以上経つが、いまだ、もちろん、わが座右の書*1である。
ところで、司馬遼初心者の方から、たまに「最高傑作はどれか?」と質問される。難しい質問だが、センセイに心酔する生涯一書生の愚見ながら、正直言って、センセイの本領は世評高い長編ではなく短編で発揮されていると信じる。そういう意味では、個人的には連作集「新選組血風録」と存ずる。内容的にも万人向きだし、史上悪名高い新選組を等身大に見据えた“実像”が見事に活写されているように思う*2。もっとも、短編集なら上記に挙げた作品ならどれも自信をもってオススメできる。
長編なら、順当ながら、「竜馬がゆく」と「坂の上の雲」、そして「項羽と劉邦」の3作、いずれかであろうか。1作のみということなら、「坂の上の雲」を推す。明治維新をそれぞれに立場は違えど決然と生き抜いた革命的歌人と日露戦争の英雄兄弟、3人の激動の生涯が力筆された感動的巨編。日露戦争の戦闘場面はプロの軍人も感じ入るほどのリアルさで再現されているなど、読みごたえは充分すぎる。もっとも、その反面、同内容の繰り返しがあまりに多いのが興を削ぐは残念。長編に特に顕著な司馬センセイ一番の欠点、連載ものゆえいたしかたなし、と片付けるにはあまりにあまりだったり。*3
先にも書いたように、司馬遼の文体と語り口は独特ゆえ、最初はとまどうことしきりかもしれぬ。しかれども、やはり日本人と生まれたからには、一作くらいは読んでおく価値ある、真の国民的作家と愚生は信ずる。喰わず嫌いの諸兄、よしやこの拙文に目をとめられたなら、だまされたと思って、ぜひとも読まれたし。読まないことには真なる批判も悪口も言えぬからして……。
なお、おわかりの方もいらっしゃるかと存ずるが、本ブログの題名は、「項羽と劉邦」で読んで覚えた古言である。開設半年余にして、ようやく名前の由来を披瀝することができ、個人的にも一息ついた次第。ブログ名からして喧嘩売ってるな、といつも思うのだが、仁慈の念をもって、どうか許されよ。
……しかしオレ、小池一夫もメチャクチャ入ってるな。笑っちゃうんだ、このへんがねぇ。*4