TVがオレの名画座だった・第7回:1986〜

エスピオナージュ>
1.『殺しのダンディーアンソニー・マン/主演:ローレンス・ハーヴェイ
2.『テレフォン』ドン・シーゲル/主演:チャールズ・ブロンソンリー・レミック
3.『クレムリン・レター』ジョン・ヒューストン/出演:パトリック・オニール、リチャード・ブーン、マックス・フォン・シドー
4.『スコルピオ』マイケル・ウィナー/主演:アラン・ドロンバート・ランカスター
5.『トリプルクロス』テレンス・ヤング/主演:クリストファー・プラマーユル・ブリナー
6.『針の眼』リチャード・マーカンド/主演:ドナルド・サザーランド、ケイト・ネリガン
7.『電撃フリントGO! GO 作戦』ダニエル・マン/主演:ジェームズ・コバーン
8.『国際諜報局』シドニー・J・フューリー/主演:マイケル・ケイン
9.『コンドル』シドニー・ポラック/出演:ロバート・レッドフォードフェイ・ダナウェイマックス・フォン・シドー
10.『スパイ・ライク・アス』ジョン・ランディス/出演:チェヴィ・チェイスダン・エイクロイド
次点:『0086笑いの番号』クライヴ・ドナー/出演:ドン・アダムズ、シルヴィア・クリステル
『虎は新鮮な肉を好む』クロード・シャブロル/出演:ロジェ・アナンダニエラ・ビアンキ

米帝先導グローバリズムが世界を席巻しつつある今も(いや、だからこそ、なお)世に国家紛争の種は尽きまじ。「ゴルゴ13」も結局いまなお続いているしね。でも、いわゆるスパイもの、エスピオナージュという呼称がしっくりくるのは、やっぱ冷戦終結までかなと。
上記10本は例によってTVで見た吹替外画。『007』シリーズも全作見てるし、どれも好きだけど、あえて外した。
『殺しのダンディー』は『テレフォン』以上に偏愛する一作なんだが、ここ何年も放映されないねぇ。苦みばしった二枚目系紳士俳優ローレンス・ハーヴェイの居ても立ってもおられぬ不安感に身をよじらせる演技がサイコーであります。「ロトフキン〜ッ!」って電話口での絶叫、もう1回見たいんですけど。仇役トム・コートネイ(『長距離ランナーの孤独』)の腹の底知れぬうっそりしたたたずまい、“東”側の老獪な情報員に扮する、サイレント期から活躍する名傍役ライオネル・スタンダーの煮ても焼いても食えなげな存在感も実にイイ。監督は名匠アンソニー・マンだが、撮影途中ベルリンにて死去、主演俳優ハーヴェイが演出を引き継いだというのは有名な話。しばらく見直してないので確言はしないが、そのあたりのトラブルも、二重スパイの不確かなりしアイデンティティがもたらす悲劇を描く本作には、結果的に吉と作用したような気配。なお、キャメラマンは『ホフマン物語』(52)『将軍月光に消ゆ』(56)等パウエル=プレスバーガー作品から『暗闇でドッキリ』(64)『ザ・ディープ』(77)まで手広く手掛けたクリストファー・チャリス。キャメラがいいシャシンは、仮に演出がヘタレでも見てられるのがけっこうあるような。



ところで、オレが日々、あえて時代遅れな映画ばっかピックアップしてるのはワケがある。オレがベストテンに挙げる作品、ハッキリ言ってどれもこれも最近作よりずっと出来がいい名作ぞろいなわけなんだが、雑誌/文献はもちろん、ネット上でもきっちりとその面白さが語られてない気配(一部マニアの方の個人サイトを除く)。とにかく何かの形で語り継いでいかないと、今後TV放映はもちろん、国内DVD化もされないまま、忘却されるだけになると思うんだよね。そんなこんなで、ムリムリ、大多数には無視されるのを承知で、あえてカルト馬鹿を決め込んでいるというわけ。
まぁ、オレの1万倍は映画を見ているであろう、タラ公ことクエンティン・タランティーノキル・ビル』みたく、狂ったオタク魂炸裂のシャシンがヒットする昨今だ。それを証拠に、たまにオレ的名作を検索して、此処にたどりついてしまう奇特な御仁もおられるわけで。オレが愛する往年の名作珍作にも日が当たる日があるやもしれぬ。それまではまったり、日陰者のボンクラなりにヨタネタを書き続ける所存。