東京は久々の雨。こないだ買ったまま、チェックしないままだった本作を引っ張りだす。原題「Seance on a Wet Afternoon」、まさに本作の雰囲気まんまな、どんより、ひんやりした一日だったような。
以下、内容にも多少触れるので、未見の方はお読みにならないほうがいいかも。
……正直、ヤなシャシンだったねぇ〜。いや、傑作だと思いますけどね、見終わって「あー、面白かった♪」なんてひとりごちれるような代物じゃあないっす。
とある幸薄き夫婦が、余人には理解しがたい動機から資産家の少女誘拐を図る、その顛末が描かれる。
黒沢清が『降霊』としてリメイクしたという話題が手伝ってのリリースと思うので、ホラーめいたムードを期待していたのだが、実は全然違った。ジャンル分けすれば、サスペンスでありスリラーであり、といういわゆる<ミステリー映画>なわけだが、実質はひねりのきいたホームドラマだったような。もっとありていに言えば夫婦もので、悲しき人間の性と共に、最後は夫婦愛がしっかり描かれるところに感動があるというか。
そう、コレ、実はきわめてセンシティブな人間ドラマなんですよ。見終わって思ったのは、よくまぁ、こういう映画を黒沢さんは『降霊』なんていう本格幽霊映画にしたよなぁ、ってこと。夫婦の葛藤劇みたいなモノを全部はしょって、知らないうちにウチに闖入してきた少女が死んじゃって、いきなり幽霊と化して祟るという不条理劇にしてしまったんだから。まったくもって、恐ろしい人ですな、ほんに。感心半分、呆れ半分ですが。
黒沢さんに限ったことじゃないが、正直、ストレートな人間ドラマを描こうとする映画作家が邦画界から消滅しつつある気がする。人間ドラマの情緒的な部分には切り込まず、映画的話法の中に取り込んで見えなくするというか。露骨に言えば、「形式」だけ整えて勝負してるだけで、中身は刺身のつま程度にも思ってないみたいというかさ。その功罪なりをここで論じるつもりはないですが。
『降霊』は黒沢清のなかでも『回路』『Cure』に次ぐ傑作だと思うけど、アレは結局、ホラームービーとしての傑作でしかないということなのかな。もちろん、それはそれで素晴らしいと心底思う面もあるんですが……
なお、DVDの解説は編集者の吉田淳氏。不勉強にしていかなる方が存じ上げぬが、映画マニアというより、ミステリマニアとお見受けする。文体といい、情報のそつないまとめ方といい、落ち着いた雰囲気があってなかなかよござんした。
ニュースで連日「サヨナラ、牛丼!」なんてニュースを見ているうちに、つい食べたくなり、夕食は近所の吉野家で大盛をかっこむ。でも、よく考えたら吉野家のモノが食べられなくなるだけで(それがある種、辛い人が多いわけだが……)、牛肉がなくなったわけじゃないんだから、自分でつくればいいんだよね。マイケル・ムーアの本に影響されたわけじゃないが、つくづくメディアってのは危機感ばかり煽りやがって、どうしようもねぇな。ノせられて食いに行ってるヤツがぼやいても何の説得力もないんですけど。