「タイム」

倦怠にまみれた一日を刻む時計の音
おまえはただ無造作に時を浪費していくだけ
故郷のちっぽけな土地から出ようともせず
手を引いてくれる誰かか何かを待つだけ
(略)
だが ある日 おまえは
10年があっと言う間に過ぎ去ったことに気づく
いつ走りだせばいいのか 誰も教えてはくれない
そう おまえは出発の合図を見逃したのだ
……
(訳・山本安見)


嗚呼、このアルバムさえ聴いていなければ、オレはもうちょっと「わかりやすい」人生を送っていたんじゃないだろか。
ピンク・フロイド「狂気」の3曲目。言うまでもなくロック史上最高の名盤のひとつだが、中学校3年生の時(だったかな?)、当時の級友で洋楽リスナー仲間のUくんにテープを借りて聴いたのが、そもそもの始まり。彼が中国に旅行した時に買ってきたヤツだったので、なんと「平克佛呂人/月之暗面」なる題名だったのを覚えている。その時にダビングしたソニーのHF-ES46分のテープはその後10年くらい、CDを買って用済になるまで、何度も何度も聴き込んだものだった。
このアルバムを聴いて以降、オレはプログレにのめりこむようになり、悲しき人生の迷い子と化したのである。大学を選んだ理由(つうかモチベーション)のひとつに、そこにプログレッシブロック研究会があったからだ、と言えばその「病」の深さはうかがいしれようと言うモノ。もっとも、入学後は結局、映画にのめりこんだせいもあり、プログレからは徐々に離れたんだけど。


ちなみに、この歌詞、昨日会った同級生のM氏からいきなり聞かされたモノ。
「いやー、オレ、人生いまだに路頭に迷いまくりだから」なんて言ったら、
「You Missed the Starting Gun.…ですな」と即座に返されてしまったのである。
彼が歌詞をそらで覚えていたのには、全くもってビックリした。すごいよね、よくそんなの覚えているよな。オレ、記憶力には相当に自信あるけど、洋楽で歌詞まで暗記している曲ってのは全然ないモンで。もっとも、聴き込んではいる曲だと、歌い回しとか細かい部分までカラオケで「再現」して歌えたりする、ってのはあるけどね。
もしかすると、オレは逆に、もうちょっと「狂気」を聴き込むべきだったのかもしれないな。学ぶべきものを学べたかもしれぬので。