『新・座頭市 III』第19話「静かなくらし」


原作:子母沢寛
脚本:星川清司
   石田芳子
監督:太田昭和
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
おすが:二宮さよ子
宇之助:河原崎次郎
岩次郎:中野誠也
盛助:小沢栄太郎
喜平次:原口剛
安蔵:渡辺満男
捨松:花岡秀
源太:青柳武志
ほか


座頭市勝新太郎)は、喜平次(原口剛)ら屈強の渡世人に襲われて、あわやという寸前の旅の老人・盛助(小沢栄太郎)を助けた。貧相な老人をどうしてつけ狙うのか。何かいわくがありそうだ。老残の盛助は、かつては“疾風の”という二つ名で鳴らした泥棒のなれの果てだった。老い先短い身に、捨てた故郷の甲州・石和に残した女房と娘のことが無性に気になった。風のたよりに聞けば、女房はすでに死に、娘おすが(二宮さよ子)が、足を洗った渡世人の宇之助(河原崎次郎)という男と所帯を持ち、石和の山道で茶店を出しているという。盛助はおすがに会いに石和へ帰る途中だった。盛助は市に油紙の包みを見せ、長年の“稼ぎ”で貯めた二千両の隠し場所を記した地図が入っているのだと、得意そうに話した。それを喜平次らは狙っているのだ。市は盛助に懇願され、石和まで同道することにした。今はもうすっかり枯れきっているが、若い時分には浮世の裏街道の修羅場を幾度もくぐり抜けてきた苦労人の盛助の人生哲学には、含蓄があった。要するに市は盛助とっつぁんとウマが合った。途中に古い橋があり、橋板が一枚腐っていた。世の中一寸先は闇だ。盛助が川に落下して死んだ。あっという間の出来事だった。行きがかり上、市は盛助の遺髪と遺品をおすがに届けることにした。実は油紙の中味は白紙だった。長年苦労をかけた娘にまさか手ぶらでは帰れない。二千両の隠し金の話は、盛助の哀しいハッタリだったのである。口には出さなかったが、市はするどい勘で、先刻大ボラは承知だった。最近盛助から手紙には大金を持って帰るからと書いてあったのに、市が届けた財布には十両しか入っていなかったので、おすがは市に疑惑を持った。あの按摩がお父っつぁんを殺して大金をふんだくりやがったんだ。気丈なおすがは、亭主の宇之助をそそのかして、市を追う途中から、強引に宇之助の兄弟分の岩次郎(中野誠也)が割り込んできた。色と欲との二筋道、大金を手に入れたあかつきには、宇之助を殺しおすがをものにする魂胆だ。そして、喜平次も、市の命と油紙の包を執念深く狙っていた…。