『座頭市物語』第15話「めんない鴉の祭り唄」

原作:子母沢寛
脚本:直居欽哉、原田順夫
監督:森一生
音楽:富田勲
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
お糸:松坂慶子
伊太郎:浜畑賢吉
万次郎:西村晃
お町:道井恵美子
半助:下條アトム
正太:鈴木政晴
卯之吉:富川茢夫
おしげ:田島和子
犬上軍十郎:深江章吾
乙造:内田勝
丑松:大和田進
ほか

いかさまを見破り、鬼神一家に「賭場荒らし!」とつけ狙われる座頭市勝新太郎)は、子分三人までをたたっ斬ったが、一宿一飯の義理で一行に加わっていた旅鳥卯之吉(富川茢夫)の命は助けた。女房と子供が首を長くして待っている生まれ故郷の高萩村で、元の甘酒屋で堅気で暮らす十両が欲しかった、と必死に命乞いする卯之吉の哀訴が、一生、女房・子供には無縁とあきらめている市に、仏心を起こさせたのである。市は、卯之吉に「きっと、やくざから足を洗うんですよ」という意見と一緒に、なけなしの金十両を与える。しかし、市の親切は無駄になった。故郷へ急ぐ卯之吉は、途中、無頼の浪人犬上軍十郎(深江章吾)に殺され、身ぐるみを奪われる。
 そうとは知らずに、市が高萩村を訪れてみると、女房も病死、遺児の正太(鈴木政晴)を育てながら妹お糸(松坂慶子)が立派に甘酒屋を守っている。けなげなお糸のやさしさに心をうたれ、陰ながら何くれとめんどうをみる市。市は、土地の親分、高萩の万次郎(西村晃)一家に草鞋を脱いだ。一家の子分伊太郎(浜畑賢吉)は、小町娘のお糸に首ったけ。一方、執拗に市をつけ回す鬼神一家の乙造(内田勝正)、丑松(大和田進)、寅七(椎谷健治)の三人は、市が高萩一家に草鞋を脱いだのを知り、自分たちは高萩一家とは犬猿の仲の日高一家を頼った。しかし、高萩の万次郎は、「座頭市の身柄を引き渡せ」という日高一家の要求を、「大事な客人は身内も同然」と、言下に一蹴する。
 苦労人の万次郎には、市が卑劣な追いはぎ強盗の真似をするような見下げた人間でないことは、一目見た時からわかっていた。また、一時は、日高一家との仲をこじらせないためにも、可愛い恋人の実の兄の敵座頭市を、何としてでもたたっ斬ると息まいていた伊太郎も、お糸の説得で、市に対する疑念を晴らす。お糸も、万次郎同様、幼い正太と一緒になって遊ぶ市が、どうしても悪い人とは思えなかったのだ。
 やがて、乙造たちは一人の殺し屋を雇った。それが、何と例の無頼の浪人犬上軍十郎。彼こそ卯之吉殺しの真犯人と知った市は…。