『座頭市物語』第12話「やわ肌仁義」

原作:子母沢寛
脚本:高岩肇
監督:倉田準二
音楽:富田勲
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
おせい:上月晃
安中の権蔵:井上昭文
仙五郎:三上真一郎
猪之吉:蟹江敬三
おはつ:春川ますみ
八州手附役人山上:古川ロック
飲み屋の亭主:佐山俊二
ほか

中仙道・安中宿へ通じる間道で、座頭市勝新太郎)は、縞の合羽に、あごに食い込む三度笠の結び目もくっきりとりりしい、小粋な旅鳥の若者と道連れになった。市のするどい嗅覚は、若者を女と見破る。実は、安中の権蔵(井上昭文)に斬られた富岡の源八の娘おせい(上月晃)。女だてらに男装で、父の仇を討つために安中宿へ乗り込む途中であった。おせいのほうでは、自分が女であることを市に感づかれていようとは夢にも思っていない様子。同性同士だと安心しきったおせいの心やすだてが、異性には潔癖な市をたじろがせる。
 安中宿。おせいは何食わぬ顔で権蔵一家に草鞋を脱ぐ。おせいが女と知り、ノーマルな情事では飽き足りなくなっている漁色家の権蔵は、男装のおせいが発散する不思議な色気にすっかりのぼせ上がり、手を変え品を変え口説きにかかった。おさまらないのは、やきもち焼きの情婦のおはつ(春川ますみ)。「わたしというものがありながら、ええ、くやしい!」と、いやが上にもヒステリーのメーターが上がる一方。おはつは、なんとか権蔵の浮気の虫の封じ薬はないものか、と市に泣きつく。ところが、その必要がなくなった。おせいがいつまでも言うことを聞かないばかりか、小しゃくにも命を狙っていると知り、可愛さあまって憎さも百倍、烈火のごとく怒った権蔵が、おせいを川原におびき出したのだ。市は、「富岡の親分さん(おせいの父)には、昔、ずいぶんとお世話になりました」と言い放つと、むんずと仕込み杖をつかみ、あっけに取られるおはつを尻目に、まっすぐ川原を目指す…。