Sidsel Endresen & Hakon Kornstad@KD Japon。

手持ちの音源も聴き、ようつべ等で動画なりを見て予習していったつもりだが、予想以上にずっとリラックスして聴けたのにまず驚き。それでいて完成形ではない、現在進行形の音。不可思議な魅力があった。
Endresen は歌手という以上に「声使い」という趣き。たくましい骨格からしておそらく声量は充分、ジャジィ〜な唄もこなすと思うし、各所で片鱗も見せたが、あえて声、息遣い、口内音等の技を尽くして多彩な音を紡ぎ出す。癒されるような唄い方ではない。脊髄にビシッと響くような直裁的な調子。
今夜の会場KD JaponはJR中央線高架下というユニークな場所。なので時折、走行音が容赦なく響き、そのたびEndresenは苦笑いを浮かべたが不愉快というような雰囲気はなし。ただ、走行中は殆ど唄っていなかった。音響効果として活用はせず、その間に次の展開なり着想なりを練っているようにも。
一方、Kornstadは最初から電車音には一切頓着せず。器用に足元の3つボタンのスイッチを操りながら、吹いた音、saxを叩いた音などをエレクトロニクスを通して、反復フレーズで繰り出す。風圧爆音で押し切る、演奏そのものの迫力よりもスタイリッシュな構築した音で勝負してた雰囲気。
演奏そのものの分析はさらに詳しい方に任せるとして、個人的に聴きいったのはおそらく無意識にまぎれこんでたであろう、懐メロとまでいかずとも洋楽ファンを「む?」と微笑させるようなフレーズ。特にミニマル的展開になるとかなりツボに入った。ウィム・メルテンなんてかなり好きなんじゃないか??
全体としてはフリージャズ的即興爆裂みたいな展開にはならず、理知的な音世界だったとは言える。だからといって張りつめたような精神的疲労を覚える緊張感もなく。かといって「癒される」ようなヌルい音ではない。表現に語弊がありそうで言いようが難しいのだが、とにかく神経を解きほぐしてくれるような、そんな音に思えたのだが、どうだろう。
Endresenは歌手にたまにありがちな感情的表現には走らず、あくまでも理性的にテンションをあげてくれる希有な唄い手、いや声使いかと。しかし、いざ神がかったら…トンデモないんじゃないか??
音源で聴いてもYouTube等で見ても得体の知れない空恐ろしさもあったEndresen。実際に見るとカリスマというよりは親しみも感じる北欧女性だったが、いざ唄いだすとやはりその個性は際立っている。いまだかつて見たことがない。まさしく世界に唯一無比の唄い手だろう。
… というわけで、12/1(水)スーパーデラックスのKornstadのライヴは必見。しかし、ブッゲ・ヴェッゼルトフトが推奨したとおり、 Endresenをさらに覚醒させ得るのは八木美知依の箏のような気がする。少なくとも、日本国内で聴ける音楽としては異次元な世界が現出するのは疑いない。
好き嫌い抜きで一見の価値ありと断言する。是非とも、足を運ばれたし!!