事件から35年。。。

「あさま山荘」籠城―無期懲役囚・吉野雅邦ノート (祥伝社文庫)

「あさま山荘」籠城―無期懲役囚・吉野雅邦ノート (祥伝社文庫)

連合赤軍「あさま山荘」事件―実戦「危機管理」 (文春文庫)

連合赤軍「あさま山荘」事件―実戦「危機管理」 (文春文庫)

「官憲」にも、連合赤軍にも、正直どっちに思い入れもあるわけもないが、連合赤軍幹部だった吉野雅邦の実像を幼なじみの編集者が描いたノンフィクションのほうに、「親近感」は覚えた。
親友としての私見や分析はほとんど書いてなく、あくまでも本人の手記と関係者の証言等、事実に基づいて構成されている。事件当時、実母が「まぁちゃん」と説得に出てお茶の間で失笑を買ったというが、実のところ、彼女を笑える人間などいない、ということは本書を読めばわかる。同志を14名も「総括」リンチで殺戮しようが、吉野の実像は当時のごくごくフツーの大学生のひとりというレベルでしかなかったのである。犯罪者になったというだけで、単なる狂信者でも異常者でもなかった。赤軍なんてタダのキチガイ集団と思い込んでいる向きがあるとしたら、おそらく、そちらのほうが頭がどうかしている。ヒトラーが人間だったように、彼らも自分たちとまるきり同じ人間でしかないわけで。。。
佐々淳行のほうは映画化までされて話題になった作品だが、いざ読んでみると、官憲だからいたしかたないかもだが、犯人たちはあくまでも取り締まる対象としてしか見なしておらず、敵意が露骨すぎるのにやや辟易した。知将たらんとする者こそ、敵に勝つ手段に長けるだけでなく、敵そのものを知るべきではないのか? 個人的には強行策をとって犠牲者を何名も出した時点で作戦としてはやはり失敗だったのではないかと思う。犯人を単純に敵視しすぎた報いではなかったか?