4/22(土)<JAZZ TODAY in Komaba>

hibiky2006-04-23

約2年ぶりの訪問となる東京大学駒場キャンパス。学生時代はロケハンがてらよく遊びに来たのだが、当時と比べると校舎の多くが改築されて、すっかり様変わりしてしまい、駒場小空間なるスペースを見つけるのに手間取る。事務所で聞いたら、新しい生協の裏手にひっそりと建ってるとわかる。
行ってみたら、部室棟と隣接して建っているらしく、かつての駒場寮ほどでないにせよ、いかにも学生の利用スペースらしい雑然とした雰囲気。かつて撮影に挑んだ回廊も、今はすでになく。。。しばし回想にひたる。
開演がオシて、1時間繰り上がり16時半開始のハズが、結局当初の予定どおり17時半すぎに。肌寒い夕風が吹きだしたキャンパス隅でぼんやりと並んで待つ。

会場は駒場アゴラ劇場より若干広いかもしれない、わりあいに立派なつくり。
最初に主催者の学生さんが挨拶。「登場されたアーティストの皆さんをリスペクトして下さい」とボソボソと語るが、そんなの云われなくても、リスペクトしてるからこそ足を運んでるんじゃないの! と苦笑。まぁいいですけど。

まずは6日間の日程の2日目に上映されたものの、トラブル発生のため再度上映となった先日逝去したデレク・ベイリーのドキュメンタリー『one plus one 2』のビデオ上映。
1時間足らずの尺だが、肝心のデレク・ベイリーの演奏シーンは最後にちょっとだけ、あとは延々と彼がかつての音源らしいノイズを聴いたり、夫人らしい女性とTVでクリケットを観戦したりと、家でくつろぐ様が延々と映し出される。意図的ではなく明らかに最低限の画面づくりもできていない稚拙な撮影にうんざり。察するに、おそらくベイリーに撮影を許可された時間が少なく、撮影素材をまるごと使わざるを得なかったか、いずれにせよ、踏み込みが足らないまま撮影に臨んだのであろう。ゴダールの『ワン・プラス・ワン』をもじった題名だが、正直云って冒涜に近いレベルの出来。
デレク・ベイリーが自室の書斎だかでギターを弾きまくる場面だけは貴重。なぜに最初から延々と演奏場面のみを使わなかったのか理解に苦しむ。。。*1

座席の隣に小さな女の子を連れた40歳前後の男性がいたのだが、始まってすぐ、なぜか女の子がしくしくとしゃくりあげはじめて驚く。周囲が真っ暗になって心細かったうえに、どうやら退屈すぎたらしい。福岡ユタカ氏の知人の方だった模様。女の子は泣いたりしたうえに、演奏中も小声でしゃべったりとほかの客には迷惑だったかもだが、個人的にはリアクションが面白かった。自分が親ならああいう場には子供は極力連れて行かないと思うけど、まぁ、貴重な体験はしたのかも。

一番手はChihei Hatakeyama(畠山地平) 。本人は「自分もさきほどのデレク・ベイリーの孫の娘くらいにはあたる」なんて最後にM.C.してたが、ラップトップ使ったエレクトロニカ、いかな即興でもベイリーとは親戚とは思えなかった(苦笑)

二番手は以前から気になっていた藤原大輔とhata-kenのデュオ、<quartz head aka fujiwara, daisuke>。hata-kenがKORGのアナログシンセをいじって、ぶっといジャーマンプログレみたいな音をバリバリと放出、首から下げたパーカッションを適宜叩きまくってテンションを高めていく。それに触発されるようにサックスを奏でながら、こちらもノイズで対応する藤原。サックスの演奏がやや理知的にすぎるというか、盛り上がりに欠けるおとなしすぎる演奏なのにやや閉口したが、趣向としては面白く、楽しめる音ではあった。ただ、ライヴ演奏としては物足りなかった。

三番手に待望の福岡ユタカホッピー神山のデュオ、<ママタンゴ>が登場。コンビを組むのはPINK解散以来15年ぶり(!)らしい*2
PINKは高校生の頃聴きまくったバンド。当時から尊敬するだったホッピー神山さん、ようやくナマで初めて見ることができた。福岡ユタカ氏は白いキャップかぶって飄然とした風情で、こちらも初めて見たながら、辺りにも自然に溶け込んでいて、衝撃はなし。
ホッピーさんはピアノの前に陣取り、横に並べた各種機材を操ってノイズと映像も担当。福岡氏は終始、時々手元の機材をいじるくらいで、ボイス・パフォーマンスに徹する。
かつてのPINKのイメージでは図抜けたシンセサイザー奏者というイメージもあったホッピーさんだが、本人自身も「キーボードの鍵盤はスイッチと同じ」と語ってたように、どうやら本領はピアノにあったらしい。
硬軟自在なアタックから、変幻自在複雑怪奇なフレーズが連射されて、たちまち夢見心地に。ピアノはどうやらかつて坂本龍一も使ったMIDIシステムだったのか、同期して音色も様々に変化。要所で鈴を鳴らしたり、クライマックスでは弦の上に物を投げて効果音を出したりと意表を突く。
帰宅後、会場で売られていたアルバムを聴き直したが、正直云って、ライヴの演奏とは比較にならない出来だった。ホッピーさんの本領もやはりライヴで発揮されるらしい。コレは通わざるを得なくなってきたか。。。
音の内容は紹介するのが難しい。シュヴァンクマイエルはじめ雑多な映像のコラージュに合わせたサウンドトラック風ではあるのだが、奏でられるメロディや音使いはジャズだの現代音楽だのロックだのといったジャンル化不能。耳なじみのいいハッキリした旋律があるワケではないのだが、クライマックスでは思わず恍惚とする高揚感あふれるフレーズも流れ、確実に絶対的なポップ感覚も横溢。元ネタだのは追究すれば出てくるのだろうが、とりあえずはやはりホッピー神山唯一無比の音楽といっていいだろう。昨年以来マイブームな八木美知依さん以来の感動!
福岡ユタカ氏のボイス・パフォーマンスも融通無礙でとらえどころなく、面白おかしいものだった。ただ、(ナマで聴いてないのであくまで感触としての比較だが)言語化不能のフレーズを唄ってるとはいえ、ダモ鈴木ほどのドスの効き方はないかも。ダモの場合、体内のうなりを口から暴発させているといった具合に、名状しがたき凄まじさを覚えるのだが、福岡さんの場合は軽やかに声と戯れているといった風情。個人的にはホッピーさんとダモの競演を見てみたくなってしまった。。。

トリは飛頭+ (ミドリトモヒデ sax, 塚本真一 p, 菊地雅晃 b, electronics, イトケン ds)。ベースにもう一方入ったダブルベースで、菊地&イトケンの乱れない堅実なリズムセクションに、ミドリトモヒデの優雅なサックスプレイが重なり、夢見心地に。あまりの心地よさについ眠り込んでしまった(汗)

終演は22時半。
上映スタッフがプロジェクター横の「特等席」で背筋まっすぐに伸ばして座ってたせいで、後ろの客(オレ含む)が全く見えなかったりと、いかにも学生というか、映画の見せ方も知らない段取りの悪さなどに苦笑したりもしたが、これだけのメンツを集めたイベントをタダで見せてもらったのだから、文句を云う権利なんてないか。
大体、最近のほとんどの客は映画館でも平気で背筋伸ばして座ることしか知らないから、この日のスタッフだけ責めるのは気の毒だ。。。映画館関係者は観客に、映画館や試写室の背もたれは頭を乗せるモノだってコトを理解させろ!

ゴタクはともかく、イイものを見せてもらったことに感謝!


*1:このテのドキュメンタリーだのも腐るほど見てるつもりだから、無用なツッコミはなしね。念のため。

*2:アルバムへのゲスト参加などはあった模様。