八木美知依@横浜ドルフィー

hibiky2006-04-15

横浜ドルフィーに行くのは今回初めて。床が木目で広々していて、いかにもジャズスポットらしい落ち着いた雰囲気、いっぺんで気に入る。
八木さん(二十弦箏)のほかは、ボーカルの酒井俊さん以下、今回が初見参な方ばかり。
宮野裕司さん(アルト・サックス)、水谷浩章さん(ベース)、岡部洋一さん(パーカッション) ……お名前はどこかでお見かけしていても、演奏をナマで見るのは初めて。
興味津々で聴きはじめたら、のっけから酒井さんの凄みある声に打たれる。久々に声だけ聴いて震えがくる歌手の方にお目にかかれた気分。なにやら少し前に花粉症を発病され、体調も声の調子も万全でなかったそうだが、それであれほどの声が出るとは凄まじい! 「凄艶」なる声とは酒井さんのような方のボーカルを云うのではないか?

とにかく最初から最後まで、酒井さんのボーカルにビックリしたのだが、そんなボーカルに負けじと八木さんは横でしっかり音程やピッチを外さず、がっちり伴奏。第一部では、歌に寄り添う、伴奏らしい箏の音色が聴けた感じ。

水谷さんは随所で堅実なベースラインをしっかり刻みながらも、各所でPAのチェックもこまめに行なわれたりと忙しげ。パーカッションの岡部さんはユニークなセットをひけらかすことなく、器用に操りながらビシッと多種多様な音群を放出して聴かせる。最初から最後まで、要所要所で悠然と穏やかながらも引き締まった音色で和ませてくれた。

圧巻だったのは第二部。第一部はトーシロの悲しさで、笠木シヅ子の「買い物ブギ」以外、オリジナルと勘違いするなど、なじみない曲でただ耳を済ませるのみだったが、第二部は名曲オンパレード。
ガーシュウィン「誰かに見られてる」、美輪明宏ヨイトマケの唄」、クルト・ワイル「アラバマ・ソング」と、自分もなじんだ名曲が、熱のこもった素晴らしい声と演奏で聴けて大興奮! 

特に、岡部さんがブラジルの民族楽器ビリンバウとわずかな太鼓のみで伴奏した「ヨイトマケの唄」は、聴いているうちにふっと涙しそうになる瞬間も。
クルト・ワイル「アラバマ・ソング」は、鬼才プロデューサー、ハル・ウィルナー制作による名盤「星空に迷い込んだ男〜クルト・ワイルの世界〜」「9月のクルト・ヴァイル」2作で愛聴した曲。それが今までにないパワフルかつ趣向に富んだ才気あふれる熱唱演奏を目の前で楽しめたから素晴らしい。

予想以上だったという感想は誠に僭越な物言いだけれども、久々にジャズらしいジャズ演奏でありながら、ほかでは聴けないオリジナルな音楽が聴けた気分で大満足。
酒井さんのライヴはぜひとも機会あれば足を運びたくなりました。。。

<アーティスト情報>
酒井俊さん:http://www.sol.dti.ne.jp/~s-shun/
岡部洋一さん:http://donna-oto.com/okabe/
水谷浩章さん:http://www.imasy.or.jp/~mizutani/
●宮野裕司さん:http://www.jazzpage.net/miyano_yushi/