笠智衆『ながらえば』(作・山田太一)

NHKアーカイブスで放映。笠智衆、78歳の折の主演作にして、彼のTVドラマでの代表作。訥々としぼりだすように口にする台詞がいちいち心に残る。老妻を亡くしたばかり宿屋主人、宇野重吉(!)との語らう場面が味わい深い。
いかにも山田太一らしい多少の「くどさ」と「臭み」も見えるけど、笠智衆のひょろひょろよろめきながらあぶなっかしく歩く、老骨痩身に鞭打って懸命に演じる身ごなしを見ているだけで心動かされる。秀作だ。もっとも、昔はこのくらいのレベルのドラマは毎週のように見られた気がする。
トレンディドラマ出現以降、ポッと出タレントを寄せ集めた学芸会以下の三文芝居ばかりがはびこり、最低限の演技ができる役者すら、ブラウン管*1からは姿を消してしまった。まったくもって嘆かわしい。
ドラマと呼ぶもおこがましい低次元なサル芝居でお茶を濁し続けるTV屋、CMを見せたいためがだけに茶の間で有名なだけの能無しタレント(一部有力事務所所属)のブッキングだけを強制するスポンサー&電通などなど、映像劇のレベルを下げる畜生どもは残らず逝くべし!
云うまでもないが、邦画でも同様の事態が起こっている。「邦画隆盛!」だのという妄言が日々マスコミでも散見されるが、本気でそんなヨタを信じている人間がいるのか? 粗製濫造は「隆盛」でも何でもない、先人が築きあげた映像文化に泥を塗るだけの狼藉行為に過ぎぬ。
今後、本気で野心ある映像作家たらんとするなら、もはや事務所なぞというモノにおんぶにだっこされてしか生きられぬ軟弱無能な国内タレントを一切使わず、あえて徒手空拳で作品を撮るべきではないだろうか? すでにある「有名」なぞという安全パイに頼ろうとするな、自らが演出の実力で、明日の「スター」を創りだせ! 手段はまだまだ、いくらでもあるハズだ。


*1:銀幕と同じくもはや死語か? 「モニター」でいいか。