オレは岩波書店の<同時代ライブラリー>、最初の書き下ろし版をこないだ古本で入手して読んだ。新藤兼人センセイ、映画監督としては映像センスがあまりにもなさすぎるというか、映像作家としてはいっさい食指動かぬ仁だが、脚本家としては素晴らしい。個人的には日本なら五指に入る、ベスト級。もっとも、脚本とは勝手が違うせいか、「正伝」と銘打ちながら、実際はタイちゃんとの交流を綴ったエッセイである本作、文章もやや雑というか、読みごたえがあるとは云えない。それでも、恥ずかしがり屋なタイちゃんがあまり語らなかった知られざる生い立ちなどが、今村昌平に勝るとも劣らぬ調査魔なカツドウヤの目から愛情こめて描かれて、興味をそそる。正直、読んでいてふっと涙ぐんでしまう瞬間も多々。こんな愛すべき好人物、二度と生まれてきやしねぇよな。。。
それにしても新藤兼人、奥さん(乙羽信子)どころか、タイちゃんはじめ誰よりも長生きしちまって凄い! 周囲の人物のエネルギーを吸い取って生きているとしか思えない。げに映画監督とは吸血鬼なり。
- 作者: 殿山泰司
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2000/02
- メディア: 文庫
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