テオ・アンゲロプロス『ユリシーズの瞳』

映画百年、そして動乱のバルカン半島の歴史を重ね合わせた映画監督の魂の彷徨を見事活写したアンゲロプロスらしい渾身の一作。クライマックス、霧に包まれた道の彼方で次々とあえなく果てるヒロインたち。高らかにあざける兵士の声。

「神は間違えるんだ!」

映画館で見た最近作のなかで一番、身中に震えが走った戦慄の台詞であった。

アンゲロプロス―沈黙のパルチザン

アンゲロプロス―沈黙のパルチザン