ピーター・セラーズ『博士の異常な愛情』

いまTVでやってるのを見てるけど、よくよく見ればホント、低予算のB級映画。
妙に凝った台詞劇の脚本と、切り替えに切り替えを繰り返す編集、そしてピーター・セラーズはじめクセモノぞろいな役者陣を気合いの演出で十二分に使い切るという縦横無尽の力ワザで、低予算なのを必死こいて誤魔化す創意工夫が涙ぐましい。
しかし、台詞が多いから、字幕だと見てて疲れるな。DVDだと吹替版が新録で入ってるらしいから、それをいずれ見たいモンだ。
しかし、ホントは昔、TVで羽佐間道夫サンがアテたというバージョンを見たかったよなぁ!
DVDの公式サイトはこちら。そうかー、コレって40年前の映画なンだなぁー。
http://www.sonypictures.jp/homevideo/catalog/catalogDetail_JPDVDSDL-10035.html
なお、本作で爆撃機の場面に流れてるのは、有名なアメリカ民謡『When Johnny Comes Marching Home(ジョニーが凱旋する時 )』。『ダイ・ハード3』でも使われてましたな。こういう音楽の使い方とか、キューちゃんの影響力、現在に至るも甚大ですわ。
ところで、オレ自身は、キューブリック作品は『突撃』『ロリータ』『スパルタカス』あたりも吹替で運良くチェックしてる。もちろん、どれもズタズタなカット版だったが。
どの時期あたりからか忘れたが、キューブリックは吹替版もすべて本人がチェックしないことには放映を許さないという厳格きわまりない検閲管理を自作では徹底。彼の死後も遺族が引き続きやってるらしい。というわけで、上記3作は仮に素材が発見されても(少なくとも民放キー局では)TV放映もされないだろうし、DVD収録もあり得ない。
著作権はじめ監督や創り手自身の作品に関する諸権利は保護されてしかるべきだが、作品は観客あってのモノなんだから、作者だけにすべての権利を独占させるコトまでは許すべきじゃない。ディレクターズ・カットをつくるのは勝手だが、最初の公開版はじめ本人の承諾抜きでありとあらゆるバージョンを残すべきであろう。
キューブリック流のこうした<完全主義>はいまだ若き映画人の夢のひとつだろうが、子供が自分の宝物をひとりじめして悦に入ってる風でもあり、正直、今のオレにはなじめない。映画についてまだあまりよく知らなかった学生時代は最も尊敬する監督のひとりだったが、今じゃベスト50にも意地でもあえて入れないかもしれないな(笑)