隆慶一郎「影武者徳川家康」

読みかけで終わるのはシャクなんでナンとか読み切ったが……個人的には全然傑作と思えないどころか、正直うさんくさいシロモノにしか思えなかった。司馬遼太郎を読み過ぎて、時代小説の楽しみ方がわからなくなってる、という面もあろうが、それ以前に文章がダラダラ長過ぎるし、キャラに対する思い入ればかりがどうも前面に出過ぎてて、閉口する。
とにかく、登場人物の描き方、いかにも「紙の上」でだけ成立してるだけな感じ、つうか、生身感が伝わってこないんだよなぁ。小説でもナンでも、表現行為ってな、キャラ取り扱い説明書じゃないンだから。
本名の池田一朗名義の脚本作はけっこう面白いのを何本も見てるから、プロットやキャラづくりは巧いのは充分伝わってくるんだけど、ト書きばかりがくどくど書かれていて、想像を働かせる余地がないのかも。読んでていて、かなり窮屈感がある。明確に舞台背景を決め過ぎて、イメージ喚起力に欠けてしまってるのかもしれない。個人的には、脚本家としてはともかく、小説家としては過大評価されすぎな方のようにお見受け。ためしに音読してみればいい。独特な音律というか、リズムにも欠けるから。