池袋演芸場

先輩に御同伴をお許し願って、池袋演芸場に落語を聞きに行く。恥ずかしながら実は寄席、初体験! まぁそれでも長年に渡る耳学問のおかげで、破瓜の苦痛、痛いけど感じちゃう!……なんてコトなく(当たり前だ)、最初からすいすい入っていけた。なんつっても物心ついた頃からの時代劇育ち、おまけに小学校3年生にして百人一首を百首すべて覚え込む等年少から骨身に叩き込んだ七五調、さらに機会あるたび落語だの浪曲だの古典芸能に触れるようにするなど、<ひとり寺子屋教育(?)>を施したオレ流修行は伊達じゃない。昔、立川談志の『落語のピン』とか毎週見てたりしたし。いやぁ、楽しかった。コレこそ、日本人ならではの快楽でげすな。
17時開始の<夜の部>から見たのだが、出演者は以下のとおり。

17:00
三遊亭窓輝:「壺算」
三遊亭吉窓:「近日息子」
古今亭志ん駒
マギー隆司(奇術)
18:00
金原亭伯楽:「猫の皿」
川柳川柳:「ガーコン」
すず風にゃんこ・金魚(漫才)
19:00
桂文楽:「千早ふる」
−お仲入り−
<乱歩作品を落語で>
柳家喬太郎
鈴々舎馬桜防空壕
20:10
三遊亭円窓押絵と旅する男

演目を解説紹介できないのが心苦しいが、以下、思い出せるネタをメモまで。三遊亭窓輝は自称・買い物上手の床屋男の壷買いバカ話。三遊亭吉窓は落語最高キャラ、与太郎ものに寄席の踊り付き、古今亭志ん駒志ん生志ん朝師匠の思い出話。このおふたり、自衛隊の陸海出身とかで、おどけたなかにも礼儀忘れぬ振る舞いが。いわゆる<色もの>の奇術、マギー隆司氏は客にうまくツッコミ入れながら、シンプルながらもそつない芸を披露。
本日の白眉は先輩イチオシの川柳川柳。昨夜の酒が抜けないとかでやや荒れモードながらも、テンション高く、十八番らしい軍歌を名唱しまくり。何度も立ち上がったり中腰になったりと73歳という御年を感じさせない派手なパフォーマンスにびっくり。弟弟子の円楽やジェンキンス氏に対する放送禁止必至の毒舌も素敵だった。素面モードの時はさらに絶好調らしいので、ぜひ見てみたいモノ。漫才コンビのすず風にゃんこ・金魚はいいトシこいたネェさんふたりのボケコント。桂文楽は長家のセンセイによるインチキ在原業平の名歌の絵解き話。時間がオシていたせいでハイスピードなのが気の毒だった。
お仲入り後はなにやら立教大学も絡んでいるらしい、池袋と縁深い江戸川乱歩作品を落語で語るという催しもの。これまた先輩が一目おくという柳家喬太郎はどうやら乱歩ワールドの舞台設定を援用したらしい創作落語。赤いビロードの部屋に集うあやしき一団と彼らに招かれたさらに怪しい落語家の奇妙な一幕を、ブラックな味わいで語るという趣向。やや描写がくどい箇所もあったが、噺家当人の個性は出ていて一興。続く、鈴々舎馬桜防空壕」はパロディといささか品ないサゲつけていかにもな落語と踊り付き。パフォーマンスは楽しめた。
で、トリが三遊亭円窓押絵と旅する男」。語りがいかにも落語調というだけでコレが一番面白くなかった。まんまやっちゃぁ、ダメってぇのよ。ヒネリがなきゃァ、いけねぇやな。
高レベルな出し物とは云えないのだろうが、とりあえず、ナマ寄席初体験者的には充分以上に楽しんだ。いやぁ、こりゃあ絶対ハマるわ! ボンクラの最高のたしなみだよな! ボンクラゆえ、<飲む・打つ・買う>は(「形」だけながら)クリア済み、コレで寄席通いするようになりゃあ、オレもようやく一人前(いちにんめぇ)ってぇモンよ!