のび太@「ドラえもん」(松本大洋バージョン)

(略)
「チクショーむかつく。吐きそうだぜマッタク。いっそ狂っちまえたら……」
誰もいなくなった公園で、のび太は頭かきむしり、ささくれだって独り言。回想とりとめなく渦を巻く。
ふと目をあげると、目の前に老人が。
「なにか?……」
「疲れるだろそういうのも」
のび太、まじまじと無言で見つめ返す。
「どうせ死ぬまで生きる。気楽にやれ」
タバコくゆらせ、老人、静かに告げる。
「気取るな」
老人はふっと瞑目。
気付けば、空から粉雪が舞っている。
「積もるぜ明日は」
(略)

国民的マンガ総本家たる名作の、♪ほんわかぱっぱー、ほんわかぱっぱー…な“あったか”ムード、情け容赦なくバッサリ切り捨てて、“殺伐たるロマンティシズム”とでも評すべき、完全無欠の松本ワールドでグサグサ吐き捨てられるのび太のモノローグ、まさに「僕の血は鉄の味がする」(from「ピンポン」)モードにて、恐るべし。肝心のドラえもんなんざ、どこにいるやらわかりゃしねぇ(笑)。しゃべるだけのただの猫*1なんだモンな。でも、それがまたいい味出してるんだ。これぞ「コピー」たぁ程遠い、「カヴァー」の醍醐味ってぇモンよ! 
映画版『ピンポン』がこンな風なムードで映像化されてたら、近年稀なる傑作青春映画が生まれていたであろうに、残念無念。*2
「コミックキューVOL.2/カバー・バージョン特集」イーストプレス)より。描かずに名声を維持することにかけては漫画界のゴジと化した(爆)、元天才・江口寿史*3の責任編集。オレ的にはよしもとよしとも「ツイステッド」と並び、あのシリーズが生んだ最高作のひとつと信じる。つうか、責任編集者のテンションが保たれてたのが2冊目までというコトだったのかな? 実のトコ、漫画のこたほとんどわからないし、内情とか知らないので、このへんでテキトーにやめます。



*1:でも、けっこう可愛い。

*2:映画『ピンポン』がオレ的に最低だったのは、クドカンの見事なダイジェスト脚本にはしっかり残されていたハードボイルドな味わいを、ポーズだけのバカ監督が微塵もかもしだせなかったこと。話の良さと意外なまでの役者陣の健闘とかでそれなりに見られるかもしれないし、ヒットしたのはわかるけど、映画としてはああいう体裁だけつくろった粗雑な一品は、オレは断じて許せねぇ。スタッフの方やファンの人には申し訳ないが、唾棄すべき一作だと個人的には確信する。高級食材だのとうたいながら、ただのインスタントに人体に害悪な化学調味料をぶちこんで、見栄えと味つけだけ強烈にしたラーメンみてぇなモンだ。喰えば喰うほど、頭も心も悪くするって寸法だ。いわゆる「見てはいけない」映画と云っていいんじゃねぇか、ありゃ?

*3:最近も復刊「漫画アクション」の表紙等、イラスト仕事はしてるみたいだけど、興味ない。すんまそん。