アダム・サンドラー『パンチドランク・ラブ』

「俺の中には力がみなぎっている。一生に一度の恋を(してる)。とてつもなく強くなってる」

アメリカ映画新世代の最重要監督P.T.A.ことポール・トーマス・アンダーソンの長編劇映画第4作(02年度カンヌ映画祭監督賞受賞)。重度のシスコンで癇癪持ちのボンクラ三十男(アダム・サンドラー)が、しとやかで夢見がちなバツイチ女性(エミリー・ワトソン)と生涯初めての恋におちて大変身、次々にふりかかるトラブルも突っ走って振り切ってゆく。刻々と揺れ動く主人公の心情を鮮烈に映し出すキャメラワーク、緻密に加工/配置された音楽&音響、卓抜なるアクセントとして劇中に挿入されるアートワーク。題名のごとく、観客を“強烈な一目惚れ”(パンチドランク・ラブ)に陥らせる、パワフルでシャープな、いまだかつてないスタイルのラブ・コメディ。前3作で囁かれたスコセッシやアルトマンのフォロワー的な印象から完全に脱却、P.T.A.こそ新時代を担う天才であることを証明する必見作。*1

引用した台詞はDVDの日本語字幕(翻訳=柴田京子)から抜き出したもの。

原語:“I have so much strengh in me, you have no idea. I have a love in my life. It makes me stronger than anything you can immagine.”
吹替版(翻訳=桜井文):「いまの僕には怖いものなんか何もないんだ。一生に一度の恋をしてる。彼女を守るためなら、どんなことだってできる」

今回は吹替版で見直したので、そちらも書き出してみたが、字幕のほうがどっちかといえば正確かな。意味はわかるし、どっちでもいいんだけどさ。森川智之アダム・サンドラーはなかなか悪くないけど、欲を言えば、もっとサンドラーならではの子供っぽいブツブツしゃべりを意識して欲しかった。下手するとキアヌ・リーヴズとかと勘違いしそうだ(笑)。深見梨加エミリー・ワトソンはハマってて合格。谷昌樹フィリップ・シーモア・ホフマンは、頑張ってるけどやっぱ物足りない。ホフマンが本作終盤で放つ、「シャラ〜ァァップ!」大連発の脅し文句は一世一代の名演技。よってオリジナルに勝るものなし。
吹替マニアのオレですが、本作に限ってはまずは字幕版で見ることをオススメいたします。吹替版も落ち着いたムードで見られていい感じなんですけどね。つうか、ホントはどんな外画の吹替版も、まずはオリジナルを見てから楽しむべき、ということなのかもしれんけどさ。


*1:「新世代監督はアメリカ映画を救えるか」(エスクァイアムック)新作紹介より